ついに地上の工事が始まった。
地下2層分の工事に20カ月以上費やした。
その原因はじつに多岐にわたっている。
意外に知られていないことだが、
地下では地上部のメインストラクチュアを形成している「カテノイド」(3次元曲面シェルの呼称)のシステムといわゆる柱梁のグリッドシステムが混在している。
水平垂直の世界に有機的な曲面が載せられるところもあれば、
有機体が地下2階の耐圧版まで落としこまれる部分も存在しているため
その境界の定義や調停には想像を絶する困難を極めた。
なにはともあれここまでたどり着いた。
その境界面がナスカの地上絵のようにくっきり浮かび上がるのをみても
特別な感情は湧いてこない。
かといってこれから起こりうる未曾有の問題に恐れるのでもない。
ただぼんやりとその幾何学を眺めているだけにすぎない。