この何年か気になってる増改築、改修、修復といったテーマについて何回かに分けてお話したいと思います。
エストニアでは、90年後半からリーマンショックまでの間建設ラッシュが続いていましたが、古いものをすべて壊して新築をしていたわけではありません。もちろんそれには文化財を保護する運動の広まりもあったわけですが、建設後100年以内の建物も建物内部の改変は認めたり、建物上部への増築を認めたりするソフトな保護も含めて全体の地域の特徴を出来るだけ生かす方向で「町全体のリノベーション」が図られてきたように思われます。
街の中心地区には4から10世帯ほどの入った木造、石造、コンクリート造の2から5階建てほどのアパートが建ち、断熱効率のよい窓に入れ替え、外壁の断熱性能を上げる必要がありました。建物上部への増築に対して、行政は中心地区の人口密度を上げる効果があると認め、増築部分が既存の容積の33パーセント以内の場合は新たに都市計画上の手続きを経ずに建築許可を与えてきました。この二つの必要性と法的な誘導もあり、それぞれのアパートごとに作っている協同組合が事業主となり、増築部分に計画するアパートの分譲価格で、外壁、窓、そして屋根の補修、改修工事を賄うのが一般的です。
またエストニアは地震がないため、増築を伴った改修工事は比較的に容易になされているようにおもいます。
「フルシチョフカ」とよばれるフルシチョフ時代に建てられたアパート。一層分の増築がされています。奥には同じタイプのもとのままの4階建てのアパートが見えます。
1983年に建てられたオフィスビル(写真は2003年のものです)は
2006年に改修、増築されてこのように。セットバックしている増築された部分にはアパートが入っています。私自身はこのプリキャストパネルの彫りの深いリズムが好きだったので、つるんとしたガラスで隠されてしまって残念です。
手前の建物は増築部分を金属製の素材で覆い既存部分の対比をうまく作ってると思います。奥に見えているアパートも調べてみると実は一層分増築されていました。
近くで見るとこんな感じ。もともとあったかのように見えますね。
次のアパートは横長のガラス窓の入っている部分と屋根裏部分を含めて増築されました。
脇に回って見ると、
増築部分のヴォリューム感がいいと思います。
次回もこのテーマを続けて取り上げたいと思います。