エストニア・タリン便り_2012.01.14


遅ればせながら、あけましておめでとうございます。

今年もどうぞよろしくお願いします。

 

今回は先週末に足を運んだ展示の紹介をします。

 

先週末、2011年の欧州文化首都のイベントも殆ど終わってしまった中でひとつ見残していた展示を思い出し、最終日間際になって足を運びました。フランス人アーティストのソフィー・コール(Sophie Calle, 1953)TAKE CARE OF YOURSELFという題の展示で、エトカル・ヨハン・クーシック(Edgar Johan Kuusik, 1888-1974)とアントン・ソアンス(AntonSoans, 1885-1966)の共同設計によるクンスティ・ホーネ
Kunstihoone、アート・ビルディング、1934)で開かれていました。

 

このアーティストは日本ではあまり知られていないようですが、彼女のこの展示は2007年のベニスビエンナーレの際にフランス館で公開されていました。

この展示の発端はTake care of yourself という言葉で締めくくられている恋人からのメール。分かれたらもう会う気もないし、友人としてこのまま続けたくはないと綴る別れ話のメールを彼女はいろいろな職業や職能をもつ107人の女性に送り、それぞれのやり方で解釈、分析、コメントをしてくれるよう依頼しました。彼女にとっては別れから立ち直るための「セラピー」になったようです。

 

2階にある展示ホールすぐ目に入る参加した女性たちのポートレート。

 

 

そしてメインホール。

 

それぞれの女性からの綿密な分析(精神鑑定、使われてる言葉や文法、法律上の分析、占い、警察官として訴えと受け取るか等)が額に入れられ、ポートレートと伴に展示されています。

 

この女性は会計士。メールの文章を引用し、二人の関係から生じた財産と別れによる損害賠償責任の額が読み取れます。いい皮肉ですね。
 
中には作曲した人、中学生くらいの女の子もいます。
 
展示のハイライト、ビデオインタビューによるインスタレーション。DJ、歌手、バレリーナによるパフォーマンスもあります。
 
日本の文楽のようなものもありました。
 
このように、アーティストの私生活をドキュメンタリーの手法で再構築し、メロドラマに陥らないところで線を引きアートとして見せる。フィクションとノンフィクションを混ぜ(おそらく)、併置することによってまじめだがユーモラスに読めてくる回答を額に入れてミニマムに提示。部分における細かな違いと全体の量。いろんな角度から楽しめる展示でした。写真家の友人と話したところ、ここ10年程ののあいだにタリンで開かれた展示の中でも一番よかったという結論になりました。
 
この別れ話を切り出した彼が誰なのかはわかりませんが、コール自身の言葉によると、このアートプロジェクトの後、友人になれたそうです。
 
 
 
 

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