スミルハン・ラディックがチリからやってきた。
日本に来るのは昨年に続き2度目。そして初めての京都。
この日はスミルハンと姉のサンドラ、息子のトリスタン、
京都工芸繊維大学のビライさん、キドサキさん、そしてセジマさんと共に
京都観光に同行させていただいた。
<大徳寺―独坐庭>
左からサンドラ、スミルハン、トリスタン、キドサキさん、セジマさん
前日からの冷え込みで、この日もまだ市内にはうっすらと雪が積もっていた。
午前中はいくつかの寺社仏閣を巡る。
<上賀茂神社>
以前の記事でも少し触れたがチリの南部は木造建築の文化であり、地球の裏側ながらも非常によく似た性質を持つ木造建築も見受けられる。
ex)チロエ島の住宅群―伊根の舟屋など
またその前日に彼のレクチャーが催され、その中で私は” fragile construction ” と “dense of structure” という言葉が印象に残った。
一つ目は小屋やテントといった立派には建てられない、即席的な建築が故に獲得できる外部環境(光、雨、風)との接続。
二つ目は建築が内包する密度の変化(構造、闇)による空間の構成。
これらは非常に日本的な感覚に近いところがあるなと思っていて、例えばそれはふすまの障子のようなはかなさであり、大きな屋根によって作り出される奥行のコントラストなのかもしれない。
そしてそれらが彼の建築が内包する「時間性」みたいなものを説明する手掛かりかもしれないと思いながら境内を練り歩いていた。
午後からはセジマさん、キドサキさんらと別れ、河原町の辺りへショッピングに向かう。
ビライさんは外国からのお客さんを京都に案内することが多いらしく、粋なお店をたくさん知っている。
特に和傘、灯りの「辻倉」、私も愛用の足袋の「sousou」、あとはおなじみの「コムデギャルソン」あたりは喜ばれるそうだ。先日もオルジャティやビジョン・ジェインらを案内したと言っていた。
<イサムノグチのakariが数多く揃う「辻倉」>
<足袋にご満悦のトリスタン、日本人より日本人なビライさん>
ビライさんから伺った話でとても興味深かったのはこうした日本での体験が個々の建築家のフィルターを通して少なからず建築に表現されていることがあるということだった。
例えばヘルツォークとド・ムーロンを案内した時は上記のakariが大変気に入り、たくさん持ち帰ったそう。
そしてその後、青山にあのようなビルができた。
またピーター・ズントーをある寺の庭に案内した時彼は3時間、ただただ座っていたそうだ。そして昨年のサーペンタイン・ギャラリーのテーマは”hortus conclusus”=”囲まれた庭”
スミルハンにとってもきっと今回の日本の体験は特別なものであったはず。
今後彼の作品にそれがどういった形で還元されていくのか非常に楽しみである。
また今回は外国人のフィルターを通した「京都」ひいては「日本」を垣間見れたことは自分にとってもとても刺激的な体験であった。
当日ご一緒させていただいたスミルハン、サンドラ、トリスタン、
そしてセジマさん、ビライさん、キドサキさん、改めてありがとうございました。