神々の島々02_太陽の島



神々の島々02 (1)

前回からしばらく空いてしまったが再びこの夏()に訪れたチチカカ湖について書くことにする。

神々の島々01_チチカカ湖へ

 

先に言っておくとこのチチカカ湖では4つの島に訪れた。ボリビア側で1個、ペルー側で3個だ。一つ目はIsla del Sol (イスラ・デル・ソル)、直訳すると太陽の島だ。拠点となるコパカバーナの町からはいくつもの連絡船が出ている。今回は朝の8時半の便に乗って島の北の港から上陸し、歩いて島を縦断。その後夕方に南の港から再びコパカバーナに戻るというプランにした。

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出発の朝830.島へと向かう連絡船はほぼ定刻どうりに港を出発した。空はグレーの雲で覆われ、今にも雨が降り出しそうである。船が走り出してから1時間弱。低く立ち込める霧の向こうに島のシルエットが浮かび上がり、やがてその表面に縞状の段々畑が姿を現した。

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この島の見所は点在するインカの遺跡と斜面地を覆う段々畑だ。インカの遺跡といえばマチュピチュを代表するペルーが有名であるが、そのインカ文明の起源はここボリビア領の太陽の島にあると言われている。

 

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ではなぜ「太陽の島」と呼ばれるようになったのか?考古学者ベルナベ・コボによると2つの説があると言われている。ひとつはインカの神話で太陽神とされているInti(インティ)の息子であるインカ帝国初代国王マンコ・カパックがこの島の聖なるチチカラの岩から生まれたとされる、という説。もうひとつは洪水説。かつてこの地は長い間大洪水に見舞われ、世界は闇に閉ざされていた。やがて水が引き最初に現れた陸地がこの島(ここは島でありながら標高は約4,000m)であり、そして聖なるチチカラの岩の背後から太陽が昇り再び空を照らした。そしてこのチチカラの岩の場所に寺院が建立され、信仰の対象とされた。

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なのでこの地は古代ティワナク期(AC400~1200)、あるいはインカ帝国時代(AC1400~1600)から宗教的な聖地とされていた。16世紀のスペイン侵略後もキリスト教カトリックの元その聖地としての性質は継続され、特に拠点となるコパカバーナには町の規模にはやや不釣合いの立派な教会がありここは現在でもカトリックの巡礼地として有名なのである。

神々の島々02 (11).JPG

 

そして現在の島はというとそうした歴史を売りにした観光が主な生業となっている。800世帯の島民のほとんどは原住民のインディヘナであり、彼らは原住民語のアイマラ語とスペイン語を話す。島の面積は21k㎡とやや小ぶりで、島内には車道は存在せず主要な道は島の石で舗装されている。観光のほかにはインカ時代から続く伝統的な段々畑でジャガイモ(ジャガイモの原産はこの辺りのアンデス地方であることは有名だ)、キヌアと呼ばれる穀物、そしてボリビア国民の必需品ともいえるコカの葉などを栽培している。コカの茶はこうした高地においてとてもポピュラーな伝統的、庶民的嗜好品である。

 

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 島北の船着場から歩いて1時間ほどでこの島のハイライトであるチンカナの遺跡にたどり着くことができる、と地図には記してあった。道中は風光明媚な段々畑や広大な湖に浮かぶ周辺の島々を見渡すことができる。しかしここは島と言っても標高3,800mのチチカカ湖に浮かぶ島。ほぼ富士山と同じ標高である。少し坂道を登るだけで息が上がる。

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 このチンカナ遺跡は山と湖と遺跡が織り成すインカ文明のノスタルジアを爽やかに味わうことができる。

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 遺跡の中ではツーリストたちがガイドの説明を熱心に聞き入っている。ツーリストの構成はヨーロッパ人、北米人、アジアだと韓国人が多いか。後は南米からだとメキシコ・チリ・アルゼンチンといった南米富裕国が目立つ。ちなみにボリビア以外の国でボリビア人のツーリストと出会う確立はかなり低い。というのもボリビアは南米最貧国と言われており、その原因のひとつは約100年前の戦争でチリがボリビアから地下資源と海を奪ったからだ。だからチリとボリビアは政治的に仲が悪い(これにペルーも加わる)。この辺りの隣国同士のポリティカルな軋轢と言うのは日中韓のそれに近いかもしれない。ボリビア渡航前、同僚に冗談交じりで「チリから来たことは伏せておけ」と言われた。

 

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島の話に戻ろう、と言ってもこの遺跡のあとは島を縦断する尾根道をひたすら歩くだけだ。

  

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 すれ違う現地民に目的地までの所要時間を尋ねると「あんたらの場合だと3時間くらいかね。私らは2時間半でいけるけど」という答えが返ってくる。途中いくつかのチェックポイントがあり、ちびちびと通行料を接収される。昼を過ぎた辺りから雲ひとつない完全なる晴天がやってきた。標高からくる酸素不足、頭のだるさと照りつける強い日差しは容赦なく体力を奪ってゆく。しかも帰りの船の時間も徐々に差し迫り、そう悠長に歩を止めることもできない。

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やがて道すがらに民家や商店が増え始め、通りが町の様相を帯び始めてきた。そして目的地の島南の町、ユマーニにたどり着いた。ここでは小さなホテルやコテージなどがあり、宿泊することもできる。この島を時間にとらわれずゆっくりと堪能したければ一泊したほうがベターだろう。伝統衣装に身を包んだインディヘナやロバやヤギが行きかう下り坂を駆け下り、停泊していた連絡線に乗り込んだ。売り子の老婆から冷えたインカコーラを買い求める。昔駄菓子屋で飲んだような、どこか懐かしく安っぽい味のする黄金色のコーラが火照った体に染み渡った。

 

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