夏の夜は書を携えて、街へ出よう


ここチリは南半球なので太陽は北の空に上がり、夏は12月にやってきて、冬は7月にやってきます。なので今時分、こちらは夏真っ盛りなわけであります。夏は日中の気温こそ30~35度と日本と同じくらい上昇しますが、地中海性気候特有の乾いた空気によりカラリと暑く、夜になると気温も15度程度まで下がります。なので夜になるととても心地よい風を浴びることが出来るのです。
またこの時期、太陽が沈むのは大体夜9時半ごろと遅いので、ここサンチアゴでは夏になると街中で様々なイベントが繰りひりげられ、人々は気持ちのよい夏の夜を謳歌します。それではサンチアゴの健やかなナイトライフをいくつかご紹介しようと思います。
①第一火曜日の自転車集会

まずひとつ目は自転車ツアー。
これは新市街の広場に集合して自転車でみんなでサンチアゴの街を徘徊しようぜ、という企画のものです。厳密に言えばこの催しは毎月第一火曜日に開催されるので、夏限定のものではないのですが。大体20kmほどの道程を1時間半から2時間ほどかけてのんびりと廻ります。ルートは毎回変わります。

夜の8時半スタートで集合場所のイタリア広場には続々人が集まってきます。公式発表では4,000から6,000もの人が集まるそうです。この日も広場には収まりきらない人が既に大挙しています。

8時半過ぎからだらだらと出発します。そしてスタートしてすぐは渋滞しています。


徐々に流れ始めました。基本的に車道を走ります。警察が交通規制をしているのでチャリダーたちは我が物顔で公道を駆け抜けていきます。

 

基本的には横断歩道をやる気のない警察が取り仕切っています。車側もうっかりこのチャリ集団に遭遇してしまうと時に数十分足止めを食らうハメになります。

 

それでも時々こうして自転車と自動車のせめぎ合いにより渋滞が発生します。こうなると
チャリ勢から車勢にむけて一斉にブーイングと怒号が飛び交います。
「この娼婦のXXX!!!」
「そのおっ立てた中指、テメェのXXにいれやがれ!!!」
などなど。とてもここには書ききれません。

それに対して車勢は一斉にクラクションを鳴らして応戦します。
この自転車vs車のやりとりはある意味このイベントの盛り上がる場面のひとつなので、何だかお互いにそれなりに楽しそうにやっているように見えなくもないのです。

美しい夕暮れに向かって走ります。


だいぶ夜も更けてきました。

トンネルに入ると外人さんたちはなぜかハイテンションです。
フォォォォォオオオオオーーーー!!!

キッズも夜更かしして夜道を走ります。
ちなみに日本で言う所の暴走族のようなものはこの街(国)には存在しません。
運転は日本に比べれば幾ばくかは荒いですが、
それでも基本的に歩行者優先ですし、マフラーの改造もしません。
たまに急ブレーキの甲高い音と共に、アスファルトがタイヤを焦がす芳醇な香りが漂う程度です。


旧市街から貧民街まで。もはやどこを走っているか分かりませんが、ひとついえるのはこのイベントに参加していなければこの道を自転車で走ることは一生無かったでしょう。

この日は参加者も多く、渋滞も多かったので2時間ほどかかってフィニッシュ。スタートのイタリア広場へ戻ってきました。なんだかんだで11時手前だったと思います。
このイベント自体はNPO団体が仕切っているらしく、サンチアゴだけでなくチリ全国北から南までの様々な都市で行われているようです。僕は普段も自転車通勤なので、普段走っている街をただ大勢で走るだけの感覚かと思っていましたが、これはデモなどにも通じますが、やはり都市を占拠して闊歩するというのはある種の都市的快楽が味わえるのだなと感じました。個人の都市への帰属意識を煽ります。都会って悪くない。
はたして日本で、例えば東京の丸の内でこんなことが出来る日が来るのでしょうか?

 

②野外映画祭

さてお次は野外映画祭です。これは普段ランニングで通る大きな公園で何やらガチャガチャと設置しているのを見つけたのがきっかけでした。その正体は野外映画館なるもので数日後には巨大なスクリーンが完成していました。

コレ、入り口の手前から撮ってるんですがモロにスクリーン見えてますね…でもチリ人は細かいことは気にしません。

映画祭感があるエントランス。

中に入ると巨大ビアガーデンになってます。露店がたくさんでていてみなビールを飲んだりしながら開演までのびのびと過ごします。アンデス山脈を背後にカンパイ!


パタゴニア産のおビールをいただきます。

グルメバーガーと共に。

開演時間も迫り人々も徐々にスクリーンの方へ移動します。


ちょうどよく日も暮れてきました(夜9時半)

思いのほか人気イベントで前売り券購入時には既に最前列しか残っておらず、多少なりとも危惧してたのです。しかしスクリーンの解像度もすばらしく、そして時折風になびくスクリーンもまた野外映画祭の風情とでも言いましょうか。
ちなみに見た映画はこちらです。

Hector and the Search For Happiness

英語音声のスペイン語字幕でしたが、コメディータッチで分かりやすい内容で楽しめました。入場料は6,000CHP(1,000円程度)。また来年も行きたいと思える優良イベントでした。

③野外ジャズフェスティバル
これもオフィスから家に帰る途中の公園で何やら設置しているのを見かけて。数日後には立派なステージが設置されていました。

 


これも先ほどの映画祭同様外にダダ漏れなんです。位置関係で言うとこんな感じです。


左側の公園にステージがあって、川を挟んで右側に別の公園があるんです。なのでその右側の公園側にずらりと人が陣取っています。(もちろんタダ)


この右側公園からでも十分なんじゃないか…と思いましたが一応左側公園内へ。

座席ランクはいくつかあって、ステージ正面席、ウイング席、席なし(芝生)。で、ここはもちろん芝生席へ。ここからだとステージを見るというよりかはサイドのモニターを眺めながらジャズの調べに身をゆだねます。


といっても別にジャズに詳しいわけでもないのでBGM的に聞き流しながら缶ビール片手に本を読み進めます。
オクタビオ・パス「弓と竪琴」
難解な詩論はさほど頭に入ってきません。心地よいと風と音と酔いがページをめくる手をゆるめます。

奏者たちは英語を話していたのでアメリカのグループでしょうか。演奏自体は2時間ほど続き、程よく酔いもさめた所で帰りました。

 

④青空蚤の市

これも近くの公園で開催されていたものです。チリに来てから変わった事は公園によく行くようになったことです。それで家の近くでこの蚤の市のお知らせの幟を見つけて足を運んでみました。ちなみにこの明るさで8時半くらいです。

本とか
ちなみにチリって一般的な物価に比べて本が高価なのです。本税的なものが高いらしい。
どうやらピノチェト軍事政権時代の思想統制で出版が規制されていたことの名残らしいです。いつの世も独裁政権下では文化は抑圧されるものです。

 

他にはオシャレ雑貨などが並びます。


そして戦利品

 


-バルパライソの青空壁画美術館についての本:2,000円
-バルパライソの都市交通の歴史を描いた本:3,000円
-エルクロッキー(トーレス&ラペーニャ):1,000円
-古代から現代の南米のユニークな都市(アステカ都市からブラジリアまで)の本:700円
というわけでここ最近のサンチアゴ夜外活動をお届けしました。

この自転車イベント、野外映画祭、ジャズ祭、蚤の市といい
この国の人々は外で何かを催すということにかける情熱はすごいなぁと思うのです。
そしてそれを受容するサンチアゴの街そのものの懐の深さというかゆるさもいいなぁと思うのです。
僕はきっと日本にいたときよりも都市に対する希望というか、可能性みたいなものを感じている気がします。というか都市に対して興味が出てた。
そのあたりも含め僕はまだラテンアメリカで学ぶことは多いような気がするのです。

この夏休みもまた新しい世界をのぞきにいこうと思います。


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