interview#041 山道拓人


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山道拓人(さんどうたくと)

ツバメアーキテクツを千葉元生、西川日満里、督和らと共同主宰。

1986年東京都生まれ / 2009 東京工業大学工学部建築学科卒業 塚本由晴研究室 / 2011 同大学大学院
理工学研究科建築学専攻 塚本由晴研究室 修士課程修了 / 2011-同大学博士課程 / 2012 Alejandro Aravena Architects/ELEMENTAL( 南米 / チリ ) / 2012-2013 Tsukuruba Inc. チーフアーキテクト / 2013 株式会社ツバメアーキテクツ設立 / 2013-2014 横浜国立大学大学院建築都市スクールY-GSA 非常勤教員 / 2015- 東京理科大学 非常勤講師

はじめに

横浜国立大学大学院/建築都市スクール“Y-GSA”では創設した2007年より「横浜建築都市学」という授業が行われている。「建築・都市の未来はどこに向かうべきか」を考えるために、様々な分野の講師を招聘して、建築・都市・社会を相互に関連づけながら議論していくことを目的とする2時間半のオムニバス・レクチャーである。2015年度・後学期の「横浜建築都市学」のテーマは「20世紀の思想から考える、これからの都市・建築」であり、スタジオ・マネージャーの寺田真理子さんによるコーディネートのもと全5回が行われた。今回取り上げた5つの都市論・建築理論は、現代、そして未来の都市・建築を考える上でも重要な視点を投げ掛ける。私たちはそれらを相対化しつつ、私たち自身の建築・都市理論の構築につなげていくことができればと考えた。各回の登壇者はY-GSAの講師、ゲスト講師、モデレーターを務める若手建築家、理論家の3名で構成された。ユニコーンサポートではこの「都市学」のスピンオフ企画として3回分を取り上げる。

 

1回は、20151215日の横浜建築都市学でモデレータをされた山道拓人さんにお話を伺う。1215日の都市学は、「新しいタイポロジーのスタディアルド・ロッシの「都市の建築」から考える」をテーマにY-GSA教授の北山恒さん、ゲストの長谷川豪さん、モデレータの山道さんにより行われた。1978年に刊行されたアルド・ロッシの著書「都市の建築」の内容を元に、最初に山道さんによるレクチャーがあり、

 

1.いかにタイポロジーを学び使うか 

2.これからの建築家の存在について

 





の問いかけがされ、その後長谷川さんのレクチャー、北山さんを交えた3者による議論が交わされた。これを踏まえ、後日インタビューを行った。

 

 

 




山道さんから見た北山さんと長谷川さんの2人の建築家の違い、あるいは共通点をお聞かせいただけますか。

 

まず、北山さんは主に商業建築や集合住宅といった対社会、対資本主義と言えるような「現実社会」をフィールドに活躍をされています。それに対して、長谷川さんは、住宅建築を皮切りに、概念や原理をベースに思考する「建築世界」とも言うべきフィールドで活躍されています。その視点の違いがあると思います。

北山さんの建築は、都市におけるある種の装置、あるいはプロトタイプとしての建築つくっているのではないでしょうか。つまり、社会の中で人間がどのように流れているか、動いているか、どこまで入れるかということを組み合わせながら、都市に刺激を与えたり、人々の流れの治具になったりする装置として、建築を都市に埋め込んでいるのではないかと考えられるのです。

一方長谷川さんの場合は、概念や原理、あるいは現実との矛盾や葛藤の中で、建築を思考していて、抽象的でありながら具象的であります。新しい都市建築のタイポロジーを作られているように感じます。

一概には言えないかもしれませんが、両者には、社会から考えるか、建築の概念から考えるかの導入の違いがあります。しかし、両者は同じ方向を向いていて、資本主義に消費されないような持続的な建築を目指しているように思います。機能や用途、プログラムといった「今この瞬間のニーズ」からは距離をとってつくっている。だから例えば、両者の図面から室名を消してみると、その抽象度はとても似ていると思うのです。

 

 

「都市そのものは民衆の集合記憶である」とアルド・ロッシは言っています。日本におけるタイポロジーと集団的記憶の可能性についてどう考えますか?

 

僕らが持っている集団的記憶は、おそらくロッシが言うヨーロッパ的なタイポロジーとは全く違うものです。町家、民家といった建ち方や、木造の軸組みや屋根の掛け方、縁側、あるいは隙間など、人々に共有される日本的な型があります。

大事なのは、ロッシを学びましょう、ヨーロッパから学びましょうということではなく、タイポロジー的な思考を、日本的な型と照らし合わせながら、その有用性を再考するということです。

要するに、設計に使えるタイポロジーを自分たちで実装できるかどうかということです。

 

 

都市学のレクチャーでは、山道さんは日本の資源のことをコモンと表現されていました。日本におけるコモンが商業空間といったものに関わったものが多く、あるお店に特定の人が集まるようにコミュニティないしコモンができていると思うんです。それらコモンやコミュニティについて、タイポロジーに引きつけてどのように考えられているのかお伺いしたいです。

 

商業というのは「機能」のことなので、一端その名前を外して、東京の専門店街を例に考えてみましょう。

例えば神保町には、同じような建ち方をした古本屋がたくさんあります。店の前に間口一杯に本が溢れ出ていて、店内の本棚を抜けると奥に店主がいるという構成です。そして無い本は無い、と言えるほど本が揃っています。また、それぞれのジャンルにおいて知識を持った店主がたくさんいて、さらに組合などでネットワーク化されています。そして最近では商品がデータベース管理されています。 

このように見ていると、神保町は単なる商業空間を超えて、共通したモノや知識を持った人が集中しネットワークされたエリアとして浮かび上がります。もはやこれは都市の貴重な資源、あるいはコモンと言っていいように思えます。そういう仕組みと空間がハイブリッドして建ち現れています。「専門店街」というのは東京における都市空間のタイプで、建築と都市の間くらいの存在なのではないでしょうか。そこには日本で言う集団的記憶みたいなものがあるのではないかと思います。

さらに、モノや人が集中すると、外側から学びに来よう、遊びに行ってみようという人も出てくるし、さらに時間的な蓄積が生まれてくると観光地としての意味合いも出て来て価値が複合化していきます。

商業空間を単に売る場所としてだけでなく、建ち方から都市空間へ連なる資源に変えて行くような思考が必要ですね。

 

 

山道さん自身は、タイポロジーをどのように学んできたのでしょうか?

 

軸は二つあります。一つは東工大で学んだ構成論です。建築を室の構成として捉える方法です。構成論で描かれるタイプはとても言語的です。例えば用途が違っていても空間の配列という観点で見て行くとある種のタイプとして見出せるという世界です。先程の北山さんと長谷川さんの建築の抽象度の話にも通じますね。 

二つ目は、大学院時代に塚本由晴研で参加した窓のリサーチです。私はベトナムなどのアジア圏にリサーチに行ったのですが、元フランス領なので西洋様式の建築やフレンチウインドウなどが今でもたくさんあるんです。植民地時代が終わった後はそれがベトナム風にカスタマイズされている。暑いので窓辺でコーヒーを飲めるようカウンターが張り出しているといったローカライズがなされているんです。そこに人々がどう集まってるのか、というのを建物や設えとセットでひたすらスケッチしていきました。ヨーロッパ的な建築のつくり方が導入されて、植民地支配が終わり、自分たちでカスタマイズしていくという、タイプと実践のダイナミックな関係が見えてきます。

 

 

タイプを実践的に使った実例を紹介していただけますか?

 

これは私が共同代表を務めるツバメアーキテクツで手掛けた「阿蘇草原情報館」です。

まず背景からご説明しますと、阿蘇の美しい草原の風景は、畜産を始めとする人々の農業活動によって維持されてきており、多くの観光客を集めてきましたが、このような相互連環のなかで成立してきた草原の風景は近年、農業の衰退化や高齢化等により失われつつあります。こうした理由から、「阿蘇草原保全活動センター」が構想され、「阿蘇草原保全活動センター」は、環境省が管轄する「草原学習館」と、阿蘇市が管轄の「草原情報館」からなり、この両施設は草原保全活動を行う二つのNPOにより運営します。

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[雁行する大屋根
©Hasegawa Kenta




我々はNPOとのワークショップを経て、保全活動や観光等、草原に関する情報を提供する総合受付、イベントを行う事のできるワークスペース、広場などの機能を提案しました。

草原での様々な活動の出発点にも、終着点にもなるような計画としています。

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阿蘇草原情報館の空間構成と社会構築のアイソメ ©ツバメアーキテクツ]

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[県産材の構造が反復する内観 ©motoo chiba









建物の型としては、阿蘇の景観との調和への配慮から周囲に多く見られる「農事小屋型」の建築のように架構が反復し水平に広がる形式や、交差点側に建物の軒が低く伸びるように配置し裏に広場を作るために桂離宮のような「雁行型」という屋根がずれながら連なる形式が合成されています。

 

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[中心に位置する総合受付、ワークスペース ©Hasegawa Kenta

また、両施設の中心に位置する総合受付、ワークスペース部分は機能的にも中心となるため、屋根を隆起するように高くして垂直性のある空間とし、メインエントランスや市民の場としての中心性を持たせた構えとし、この部分は「寄せ棟」の変形とも言えます。





結果として、隣り合う建物の屋根が尾根のように連なり、外輪山の山並みの風景と調和した外観が生まれています。

 

 

ツバメアーキテクツのプロジェクトは他のものも含め、ユーザーの設定が具体的ですね。

 

僕らは若くして、小さな規模の仕事から、公共建築など、わりといろいろなことをやってきているんです。その経験からいうと、解像度を高くした実践的な思考と、タイポロジーのような抽象的な建築思考を往復するのが大事だと思います。

だから建築をつくるときにはワークショップをやって、具体的にどう使えるかという問いかけを人々に直接するし、つくる建物がどんな用途であったとしても、抽象的に思考し、最後はアイソメに描きおこして整理しています。

空間構成と社会構築という言葉を僕らは最近熱心に言い始めています。会社自体もデザインチームとラボチームと分けています。空間構成を与えるものはデザインチームで、人的なネットワークや人々のつながりの社会構築についてはラボチームでやっています。

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[アーツ前橋の「新しい家族」に関するリサーチ展示  ©ツバメアーキテクツ]

 

 

ツバメアーキテクツは、設計時に空間構成から入るのではなく、社会構築から入っていますよね。それは社会的にすごく良いかもしれないですけど、社会は変わっていくものなので短命で、どうしても建築的な強度は下がってしまうように感じるのですが。

 

強度とはなにかという問いですね。例えば極端な話、式年遷宮というのは20年おきに建て替わって、ずっと新築なわけですよね。建築自体は変わっていっても、型は持続していきます。持続も強度のひとつだと思います。

例えば、建築家の連健夫さんと一緒に仕掛けた荻窪の集合住宅の事前リノベーションプロジェクトでは、新築の建物の完成前に様々な職能をもった多世代の人とワークショップをして、工事中にリノベーションをしてしまうということを実験しました。デザインだけでなく使い方もセットで提案していきます。一回のワークショップの参加者が30人として7回程度実施すると、この建物が竣工する時にすでにこの建物のことを良く知っている人を何百人とつくり出す事ができ、竣工と同時に活発に使われることとなりました。さらに竣工した後も入居してくる人の部屋を継続的に作っております。

時間の経過とともに建物の価値が下がるのが今の日本ですが、ずっと何か変わり続けてくこと、活性化した状態がつくられること、価値が蓄積してことなどが持続していけば何か変わるのではないでしょうか。





空間か、形式か、概念か、持続のさせ方は色々あります。ラカトン&ヴァッサルが、あるプロジェクトで、掃除のやり方だけ提案したという話も聞いた事があります。それでも確かに綺麗な空間は持続されるわけですね。

 

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[荻窪の多世代型集合住宅 荻窪家族プロジェクトの空間構成と社会構築のアイソメ ©ツバメアーキテクツ]

 

 

山道さんが取り上げられている慣習的なタイポロジーというのは目に見える空間だけを捉えているのではないのですね。

 

まず一つに「空間」という言葉の指し示す範囲というのが、変わって来ていると思います。福祉系の仕事をするようになって考えるのは、例えば、目が見えない人、あるいはそこを訪れないご家族などにとっての、その空間の価値とは何かという問いです。目に見えているものはほんの一部です。向こう側を想像する力が必要ですね。どこから材料が来るか、何故そうなっているか、というインプットを遡って行くような思考と、かたちとしてどうあるべきかというアウトプット、そして時間が経ってそれがどうなっていくかというアウトカムに対する眼差しが必要です。

 

 





ありがとうございました。

 

 






インタビュー構成:川見拓也、住田百合耶、梯朔太郎、田島亜莉沙、杉浦岳、中田寛人、宍戸優太


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