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日本の皆様、新年あけましておめでとうございます。
チリで迎える新年も今年で5回目になったが、相変わらずこの真夏の正月というものへの違和感が払拭されることはなさそうである。人々はこぞってビーチへ出かけ、バーベキューをしながら年の瀬を迎えるのだ。それでもやはり新らしい年を迎えるということは世界中どこでもめでたいものである。Feliz Año Nuevo!

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<YAPパビリオン2016 チラシ>

今日は事務所ワークの合間に友人と進めているYAPパビリオンの進捗状況でもお知らせしようと思う。昨年の5月にコンペで勝利してからチーム内でのスタディや主催者側との打ち合わせを重ね、現在は3月のオープンに向け詳細を詰めているところである。昨年は日本でもプロジェクトを紹介させていただく機会を設けていただいたりと、チリでの初めての実作に向けて心躍らせている今日この頃である。2月上旬から現地での施工を始め、オープニングは3月30日を予定している。

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<リーダーのクラウディオとキューバ人の鉄工職人>

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<ジョイントのディテール>

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<主催者CONTRUCTOとの打ち合わせ風景>

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<Y-GSAでのレクチャーのチラシ>

コンペ後の我々の最大の懸念事項はいかにこのテンセグリティによるストラクチャをスマートに成立させるかということであった。チリ国内ではなかなかこの特殊な構造形式を解析するにふさわしいエンジニアを探し出すことができないでいた。そこで我々が目を付けたのが日本のエンジニアの佐藤淳さんである。というのも佐藤さんは小嶋先生のMOOM(テンセグリティを応用したパビリオン)の構造設計を手掛けており、また小嶋先生が2014年にY-GSAのワークショップでチリを訪れた時のレクチャーやその時に発表された建築雑誌ARQを通じて、我々の中でもMOOMはテンセグリティを応用したマスターピースのひとつであるという共通認識があった。そんなこともあってチーム内では「Jun Satoに構造計算をお願いできたら最高だね。」なんて話をしていた。ここで日本人としての有難味を発揮すべくダメもとで佐藤さんでお願いしてみたところ、快く引き受けてくださる運びとなった。こうして我々のストラクチャ問題は解決に向けて大きく扉が開かれたのである。

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<ストラクチャモデル 1:50>

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<東京大学の佐藤研究室での打ち合わせ>

昨年はスミルハンのギャラリー間の展示の関係で何度か帰国のチャンスに恵まれたので、その機会を利用して佐藤さんとも打ち合わせを重ねた。佐藤さんの鮮やかな電卓さばきから導かれる数値によってパビリオンの個々のマテリアルに論理性が帯びていく。目の前でプロジェクトがすくすくと成長していく様を温かく見守っていた。

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<構造スケッチ_Jun Sato Structural Engineers Co., Ltd.>

構造計算の過程で楕円の分割の形状が好ましくないという話になった。というのも場所によってテンションが上手く作用しないらしかった。そこで元々は楕円を長さで24分割していたものを面積で24分割することによって、その問題は改善されるということになった。そう、高校時代に物理で習ったであろう懐かしのケプラーの法則第二を応用したものである。

ケプラーの法則第二
“惑星と太陽を結ぶ線分がおおう面積が常に一定になるような速度で惑星は軌道上
を動く(面積速度一定)”*

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<楕円のジオメトリーのスタディ_Jun Sato Structural Engineers Co., Ltd.>

ちょうど同じころ、イタリア・ローマを訪れる機会に恵まれた。ローマは学生時代以来2度目の訪問であったが、歴史が重層するバロックの街並みは以前来た時にはあまり感じ得なかった都市の深みのようなものを与えてくれた。そして前回のローマで最も感銘を受けたボッローニのサン・カルロ・アッレ・クァトロ・フォンターネ聖堂を再訪することも出来た。

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<サン・カルロ・アッレ・クァトロ・フォンターネ聖堂>

2度目のボッロミーニも前回と等しく美しかった。丸みを帯びた柔らかな楕円とその細部を埋め尽くす彫刻、そして抑制された光とその空間の密度に圧倒された。この教会については磯崎新と篠山紀信による「バロックの真珠-サン・カルロ・アッレ・クァトロ・フォンターネ聖堂」という写真集にまとめられている。その中の磯崎氏による「楕円の背後」という論考の中で氏はこう述べている。

“神と人間という相対峙する二つの焦点が相互に引き合うことから生み出された聖堂の形式がケプラーがとりだした惑星軌道と同じく楕円形であることは興味深い。二つの質量をもつ惑星が万有引力法則のもとで運動するときに描く軌跡の発見と、神と人間という二つの相互に牽引し合う焦点をひとつの空間に統合することは、いずれも、ひとつの時代の要請であったようである。そのあげくに、ルネッサンスの静的な宇宙観から、明らかに動的な宇宙観へと移っていたのである。”*

ローマの十字路に建つ白く静謐な小宇宙の中で、自らのデザインが宇宙の法則に寄り添うことができるのだという建築のロマンチシズムを噛みしめた2016年であった。

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YAPパビリオンはチリ、サンチアゴ、アラウカノ公園(Parque Araucano)にて2017年3月30日から5月末日まで設置予定である。

それでは 謹賀新年 from チリ

*参照文献:磯崎新+篠山紀信 建築行脚 (9) バロックの真珠 サン・カルロ・アッレ・クァトロ・フォンターネ聖堂(六耀社)


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