円錐会にご協賛いただいている株式会社タニタハウジングウェア本社(東京都板橋区)に円錐会役員でお伺いして、ショールーム見学と商品のご紹介をしていただきました。
株式会社タニタハウジングウェアは、銅板生産で創業し、現在は板金加工による雨樋、屋根葺材など建築部材を製造販売している創業70年になるメーカーです。
実は体重計や健康食で有名な(株)タニタも、もともと代表が同じ方だそうです。
様々な商品をお取り扱いされている中で、最も知られる商品部門はわたしたち役員も設計実務で何度も採用している雨樋のシリーズです。
住宅用雨樋の「HACO」をはじめとしたガルバリウム鋼板製品のシリーズ「TANITA GALVAシリーズ」はグッドデザイン賞も受賞されています。
タニタ製品で一貫して感じられるのが、過度な意匠操作のない、また操作のないように見せる技術により、シンプルさを追求している点です。「色と線を整える」というコンセプトが、我々建築家が板金部材を用いる際に何を基準にして判断しているかを、十分に汲み取っていただいていると感じます。
社員の皆さんから各製品のご説明を受けていく中で、役員の目を引いたのが、銅製品のモックアップでした。前述のガルバリウム鋼板製と異なり、銅板はめっきや塗装が施されておらず、素材そのものの仕上がりとなります。
銅板は、瓦葺きと同様に社寺建築などの屋根葺材などで現在も用いられ、日本各地の社寺修繕工事には欠かせないものとなっています。
銅板は、風雨により自然と酸化し、表面に不動態皮膜である緑青を何十年もかけて形成しますが、これを人工的に短期間で発生させた開発中の材料もお見せいただきました。
特殊な薬剤で表面をさらし、頃合いをみて酸化の進行を止めてつくるそうですが、なかなかコントロールが難しいようです。
これは、すでに緑青のついている既存の銅屋根の補修などはもちろん、味わいのある表情が建築の竣工時から得られるという点で、今までの銅板金とは異なるアプローチが考えられそうです。
私自身は、外見と中身が同じ、素材そのものが仕上がりとなった「無垢材」をなるべく採用したい、素材に素直でありたいと常々考え設計をしているので、この緑青付きの銅板は是非一度採用したいと思いました。
A・レーモンドが、「日本は古くから素材に対して単純性、純粋性を絶対的な指標とすることでよい建築をもたらしてきた」ということを著作「私と日本建築」で語っていますが、そういったものづくりのマインドをもったメーカーと、これからも建築をつくっていきたいと思えました。
この他、建築現場でもよく懸念箇所となるような部位の板金納まり検討モックアップなど、とにかく学びの多い見学会となりました。
文:原﨑寛明
fig3:タニタハウジングウェアより提供
figその他:円錐会役員 撮影