《卒制2020》8/15-藤原徹平-


 

 

《卒制2020》8/15 -藤原徹平

 

 

《卒制2020》インタビュー掲載企画、第五回は、藤原徹平さんです。

藤原さんは、一年生の時の「身体と空間のデザイン」という授業から四年生の時の「ADゼミ」まで、大変お世話になりました。改めて一人一人の卒業設計の講評やこれからについて、お話を伺いました。

ー よろしくお願いします。講評会では、司会進行という、ご意見を出しにくい立場に入られたかと思うので、ぜひ具体的に作品についてお話もお聞かせいただきたいと考えています。

そうね、僕は卒業設計はすごく重要だと思っているんですけど、その重要さは一人一人にとってということで逆に言うと、順番、順位っていうのはそれほど重要ではない。大学における自分の考えをまとめていくことが一番重要なことだと思う。なので、一人ひとりが、チャレンジできているかとか、自分にとって大きなテーマを発見できているかのほうが大事だろうと捉えています。

 

 法律を作る建築

 

そういう意味で、瀬川さんのプロジェクト*1は、印象深かったですね。講評会でいい批評も貰えた。立衛さんから「瀬川さんのプロジェクトは、法律を作る、ということだ」というのはすごく面白かった。卒業設計の一つの目標として社会や都市の次の姿を言うというのがあると思いますが、そうだとすると、建築とともに法律をつくるというのは、すごく自然で、大事なアプローチだと思います。

建築の提案がそのまま社会の秩序、真似したいものになって、それが法律になっちゃうっていうような感覚は、みんなで継続的に議論した方がいいんじゃないかなと思いました。卒業設計について、今回本をつくるのであれば、本の中でもいいかもしれないし、議論の場をつくるのでもいいかもしれないのですけど、「法律をつくる」ということはどういうことなのか、これだけわかりやすい例があれば、みんなも自分の言葉で話せるんじゃないかな。とにかく、そのような議論を導いたということだけでも、素晴らしさがありますね。

 

 パースペクティブと神話

 

 藤井さんのプロジェクト*2は、こちらも良い卒業設計だったとおもいました。中間講評の議論で方向性を変えなかったのがよかったとおもいます。アドバイスに沿って変えていく方向もあったとおもいますけど、ブレなかったことで、自分が昇るべき山の形が見えてきた感じがする。その言語化作業が残っている段階だと思います。藤井さんのテーマの中心が、「雪景色」みたいな風景の問題だとは僕は思わない。阪根さん*3の講評のときに、立衛さんがちょっと言ってたんですけど、新しいパースペクティブ、つまり新しい視野っていうのかな。そういうものを探ろうとしているんだと思いますね。真鶴だったら、馬蹄形の半島があって、その半島で生きている感覚、そういうことを実感する視野の在り方がある。それは個別の通りや人間の活動とは違う、もっとおっきな存在ですよっていうことが言えたらすごく面白いところまでたどり着けるように思います。
 
 そうした考え方というのは、構造主義的とも言える。構造主義では、地域の神話に見出す構造性と、文学や芸術の構造性の類似性からものを思考したりする。神話を読み解いていくと、根柢のパースペクティブっていうのがあるわけ。日本書記とかの神話だったら、富士山があってその深い穴の先に黄泉の国があって、火傷して大怪我して、逃げ帰ってくるっていうような、神話の中にも上下とか手前とかこちら側とか世界の秩序がある。それは日本の風土や暮らしと連動していく大きな構造でもある。火山や地震があることでそもそも大地や川があって、人は恵みをうけるのだけど、時に大きな被害にあう。火の国で生きるっていうことの、苦しみと悲しみと喜びとかが、同時にパースペクティブに物語として書かれているっていうふうに、神話的な構造は、人々の思考の深いところに入り込んでいると、文学研究などを考えるとそういう感覚が身につく。

 だから藤井さんの、川に沿って、長くつづく谷があって、そこに土手があって、その土手は土木が作ったものなんだけど、そのことによって、谷で生きるっていうパースペクティブがより鮮やかに浮かび上がってくるっていう話は、新しい神話的なものでもあるかなって思いました。ここは土木構造物がないと、生きられない。そういうような骨太なことを含む、と思いますね。

 瀬川さんみたいに、土木的な価値、経済的な価値を、転換していくプロセスも街の作られ方が変わっていって大きい問題だと思うんだけど、そうじゃなくて土木や人間の営みをもっと神話的なパースペクティブに参加させていくこともすごい大きい問題なんだと思う。

 これは文学や映画に置き換えてもよい話で、文学で郊外を扱うと、高速道路とかショッピングセンターとかを舞台に出さざるをえない。でもイオンモールとかが出てきたときの、文学的な強度の浅さたるや半端ないわけよ。イオンにいって映画見てマック食ったみたいなこと書いてあったら、ほんとに文学として薄っぺらくなるというか笑。だけど、それを書くべきだっていう考え方もあって、例えば阿部和重という作家はあえて書くわけ。山形の物語で、あえて、イオンモールてヤンキーが集まってチャラチャラ話してるっていうのも風景の一部でわざと入ってくるわけ。しかもそれを神話に重ねて、構成していくわけ、日本書紀の神話と、今の地方で起きてる出来事と、あとアメリカ映画を重ねて、そこに新しい物語を作ろうとして苦労して。どれもすごいおもしろい。ハリウッドだったら、クエンティンタランティーノとかもそう。

 藤井さんは、もしかしたら将来そういうようなものを考えられるような人になるかもしれないなという期待もしています。現実と現実じゃないことが混ざりジャンプしていく、っていうのが神話的構造で物を見ることの面白さだから、神話世界においてこの谷っていうのがどういう存在で、谷底と山っていうのがどういう風に意味が位置付けられていて、神話的構造と現代社会のアクティビティが重なっている、とかね。と、言うのは簡単なんだけど、そこから先は物語や神話や寓話への感受性というのが必要になってくるので、それもまたいろいろ感覚を深めていくしかない。

 まぁこの踏ん張った経験は絶対いきるので、自分の建築の視野を広げるために、がんばって知的に脱線していってほしいですね。

 

 

──インタビューの続きは、こちらにてご覧いただけます。→PDF記事:インタビュー誌面_藤原徹平

 

 

*1 瀬川未来「ロードサイド商業がまちを守る-ロードサイド型商業の改築による災害拠点の創出とまちづくり」。

*2 藤井雪乃「その先の、雪景色-街の歴史を乗り越える新たな風景の在り方

*3 阪根歩実「風景へのまなざし-街の文脈を育む建築


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