《卒制2020》12/15 佐土原聡+高見沢実+野原卓+尹莊植


《卒制2020》12/15 佐土原聡+高見沢実+野原卓+尹莊植

《卒制2020》インタビュー掲載企画、第9回は、UE(Urban Environment)系の佐土原聡+高見沢実+野原卓+尹莊植さんです。都市計画・都市環境の観点から卒業設計や教育、まちづくりなどのお話を伺うことができました。

—-中略—-

 

見つけるんじゃなくて、見つかる!

藤井  なんか、卒業設計をバーっとやって思ったことなんですが、AD系とかって何をしているんだろうなって1年を通して思うことが多かったんです。AD系とは言っても環境のことも歴史のことも考えなきゃいけなくて、結局全部考えなきゃいけない。でも、自分がこれって思ったことを決めなきゃいけない場面もあるので、たくさんのことを考えなきゃいけないから、設計で答えるってなんだろうと思ったんです(笑)。

    たとえば1年生の課題の時とかに、歴史専門の人とか、環境専門の人に設計のことを見てもらっていたら違ったのかなと思っています。あくまで環境の問題とかっていうのは座学でしか勉強していなくて、ものを作るっていうことで専門的な知識を得られたっていう感じはしてないんです。

 

奥野  僕らの認識の中では、AT系の歴史とか計画は2、3年生の時にデザインスタジオで直接に関わっているわけですけど、UE系は座学として都市計画とか都市環境の授業はあっても、彼女が言ったような方法で知識を得るような場面というのが、3年の秋の専門に分かれた後にやっている印象があるんです。

    だから、都市計画や都市環境、防災を考えなきゃいけなくなった時に、あまり深く考えてきてないからどうしたらいいんだろうかっていうことになるのかなと思ったりします。

 

高見沢 考えたことないの?授業とってなかった?

 

藤井  授業とってはいたけど…

 

野原  でも言い方変えると、歴史とか建築計画は一緒にやってたわけでしょ?そしたらそこについてはわかってるかもしれない。

 

藤井  でも、わかってるかもしれないけど、やっぱりわかってないですよね(笑)。

 

高見沢 そんな簡単にわかるわけないじゃないの。一〇年以上やってなきゃわかんないよ(笑)。

 

一同   (笑)

 

藤井  さっきのロードサイドの話とかめちゃくちゃ専門的な話をしていたような気がするんです。そういうリアリティの話を設計の初期の段階で言われたら、すごいグッとくるというか、これじゃダメなんだとか別の方法あるかなとか考えたり出来るのかなって思ったりするんですけど。

 

高見沢 スーパーマンならね。

 

佐土原 それぞれがすごく専門的な案なので、すごく悩んでいたっていうのはよくわかりますよ。だから、やれることって、そういうふうなセンスを感じるというか、リアリティを全く無視しないで少し感じながらやるとか。でもどこかで自分の考えをまとめなきゃいけないから、あることに引っ張られ過ぎるとまとめられなくなるのはありますよね。

 

野原  諸刃の剣だから。生まれたてのヒヨコ状態というか、最初に聞いちゃったらもうその通りにやっちゃう人もいる。3つぐらい聞いた中で自分で選べればいいけど、そういう余裕もないからなかなか難しいですよね。しっかり学んだ方がいいかもしれないけど、しっかり学んじゃうとしっかり学んだところに行っちゃって、抜けられなくなっちゃったりするからね。

 

佐土原 やっぱり程々にしないとまとめあげられないかなっちゃうよね。

 

高見沢 グッとくる授業やらなきゃいけないよね(笑)! つまんなくて、記憶に残らなかったのかな…

 

藤井  そういうことではないです(笑)!

 

   自分の学生の頃を考えると、自分も含めて設計に夢中になっていた学生は、他の授業にあまり興味を持たないことが多々ありました。しかし、低学年のときにいろんなことを学ぶことを怠らずに、アンテナ張って、自分の興味ごとを学び、発見することも重要だと思います。

 

高見沢 反省してないよね?

 

   少しは反省しています。

 

高見沢 反省してるの!?僕は全然反省してないよ。僕なんか低学年の時から都市計画に興味あって、建築計画は適当にやってた(笑)。単位を取らなきゃいけないから試験は出たけど、全然授業には出てなかったね。ずっとそうですよ。高校の時からそう。でも反省してない。幸せなんですよ。満遍なく授業にでて、全部に興味持ってやっていたら、無性格な人間になっちゃう。もし何かがあって、歴史にグッと行っていたら設計なんか放り出して、毎日修復作業やっていたかもしれないけど、それでいいと思う。でもそうじゃなくてみんなは設計やっているわけだから、幸せな状態だと思いますよ。

 

野原  なんかそれを見つけるのが難しいでしょ?こんなこと言うと怒られちゃうんですけど、僕はその間にいる(笑)。

 

高見沢 もし見つける機会がなかったら我々の反省だけど、見つけるんじゃなくて、見つかる。いろいろやっているうちに見つかるから、それに食いついて楽しんでやってると、夢中になってできるもんだなって思う。今までそうやって来たわけでしょ!?

 

藤井  そうなのかもしれないです(笑)。

 

 

まちや建築に求められているもの

 

奥野  今日の話を聞いていると、UE的とかAD的とか学生側で分けて考えようとしてる部分が大きいのかもしれないと思いました。

 

高見沢 今、渋谷で防災まちづくりに着手しているんですけど、建築的な視点でオンデザインの西田さんとか、福祉の人とかとやっているんです。我々はそれぞれ持ってる才能が違うから、さっきの話みたいにどう違うかの差を目立たせるようにしてる。それは、世の中に求められているのはコラボレーションだから、出来るだけ違う人で、違う能力がある人が組むことで今までにないクリエイティブなものができるはずだということだよね。でも、都市イノベーション学部はそういう場所を作っているわけだから、どうして違いについて議論するのかなって思うんだよね。

 

   都市的な観点を持って建築を考えようとする提案にはもちろん興味を持ちますが、普通に設計論そのものにチャレンジしていた作品にも大変興味を持ちました。

 

藤井  金子さんの国際学生寮(p92-p97)で、自分ではあまり設計しないという作品とか。

 

   そう。必ずしもUEだから都市第一主義なのではなくて、卒業設計として今後建築に求められるものを私たちの専門分野の側面から見てるだけなので、それがADとUEの違いって言われてもあまり理解できませんね。

 

奥野  卒業設計だけじゃなくて、実務的なプロジェクトの時はどうでしょうか。

 

   社会変化によって建築そのものに求められるものが変わっていく気がします。最近は、ゼロエネルギーとか環境の側面を重視した建築も注目されてますし、まちづくりを重視した活動も多くみられるようになっています。建築というものが、社会で求められるものに変わっていく。それによって建築家の役割も変わりつつある。全体がそうである必要はありませんが、少なくともそのような兆しが卒業設計でも現れたり、可能性を見せたりすると、UE系だから違うというよりも、今後の社会を考えるときにすごく刺激となる材料になり得ると思います。

 

高見沢 東日本震災は、建築家の方が我々に寄ってきたという感じはすごくあるよね。渋谷駅なんか最たるものだけど、妹島さんたちが既存の縄張りを打破して、街を楽しくするために、建築も建てるし、それをつなぐデッキを作ったし、あるいは気の利かない東京都とか渋谷区とか東急電鉄とかをうまく調整してやりながら、全然違う街になりつつあると思うよ。

 

野原  小嶋さんには渋谷ストリームにどうやって関わったかとか本当はいろいろ聞きたかったなとか思います。

 

高見沢 僕は聞かなくてももうわかるよ(笑)!行った瞬間に「これはストリームだ」「建築の中に都市ができてる〜!」っていうのをすごく感じてね。嬉しかったよ!

 

佐土原 一人一人の人の動きとか。そういうことを小嶋先生と一緒にやりたかったですね。

 

奥野  今渋谷をお話がでましたけども、例えば他の場所で再開発としていいなと思った場所とかありますか?

 

高見沢 僕日立駅が大好きで、妹島先生にも「日立駅はいいですねー」って言ったんですよ。藤井さんとか日立駅行ってみるといいと思うよ。僕が感じる日立駅と藤井さんの作品との違いは、妹島さんは無理して建築で風景できましたとは言わないんだよね。風景というものをどうやって建築で見せるかだけ考えていて、我々が通勤通学で使っているコンコースというものを使って素晴らしく風景を切り取って人々に感動を与える空間に仕上げている。かつそれが街の中から見ても、余計なものを取っ払って風景を再生している。マイナスの建築みたいな。マイナスの建築の中で風景を再構築しているって感じがして素晴らしいと思う。だからそれができることによってどいてくれたぶんもあるし、いいものができたプラスの面もあるし、駅前の空間自体は普通の整備かもしれないけど、ちょっといい整備だけど、中国人とかいっぱいきて観光のために来たりとか。

 

奥野  佐土原先生は、都市環境や防災という分野が専門ですが、そう言った分野での再開発的なプロジェクトはどういったものなのでしょうか?

 

佐土原 防災的なことだといろんな拠点同士を繋ぐっていうことをやるんです。繋ぐことで両方でバックアップされて、日常からいろんな融通が利く。一緒にやることで色々煩わしいことはあるんだけど、繋がることで得られるものがある。国土交通省の人は、そういう再開発で動いているところの間をつないでいくインフラに対して、色々補助金を出しているんです。

 

藤井  再開発が進められている2つの場所を繋ぐということですか?

 

佐土原 そう。それぞれにエネルギーのシステムがあるんだけど、電気も熱も含めてシステム同士を繋いでいくっていうことをやるので、いろんなところが連動しているんですよ。それは見えないところでそういう仕組みが動いているんです。

 

藤井  たとえば近いところでどこで行われてるんですか?

 

佐土原 例えば新宿だと、JRの線路の上のデッキを通して、両方向側にある建物を繋いでいたり、高島屋とかはあの辺のデッキを通して、同じようにエネルギーのシステムがつながっていたりするんです。だから、色々な開発が起こっているもの同士をつないで行くようなことが動いていたり、ある拠点ができることで、それを少し伸ばして別のところにつないでいくということが目に見えないところで起こっているわけです。

    そういう繋ぐためのインフラにいろんな補助を出していくと、防災性とか環境性とかが高まっていくということをやっています。

 

   去年まで秋田にいたので、地方都市で再開発だけに絞って考えると、東北の方だとアオーレ長岡とオガール紫波があげられます。

 

高見沢 オガール紫波が好きなのは都市計画の人じゃない?設計としては大したことないよね。

 

野原  設計がすごいというよりは、相当コスト管理をしてコストを抑えて設計してると思いますよ。グループを組んでやっている感じですよね。

 

高見沢 大勢自体がイノベーディブだからね。

 

   そうですね。そもそも今の時代において、地方都市で渋谷みたいな再開発は難しいなかで、これらは今後の都市の未来を考えて、いろんな活動や機能を集約化している建築なので、それが結構注目されていましたね。

 

ーー  そうなんですね。そろそろ終わりにしたいと思います。本日はありがとうございました。

 

──インタビューの前半は、こちらにてご覧いただけます。ぜひご覧ください。→PDF記事:インタビュー誌面_佐土原聡+高見沢実+野原卓+尹莊植


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