《卒制2020》14/15 畝森泰行+南俊允


《卒制2020》インタビュー掲載企画、第11回は、建築家の畝森泰行さんと南俊允さんです。

 

畝森さんには3年生前期、南さんには2年後期に建築デザインスタジオでご指導していただきました。卒業設計から続くお二人の思考や、現在の興味など様々なお話を伺いました。

写真左:南俊允さん 写真右:畝森泰行さん

 

「個を超えた先の公共性」

 

  僕は卒業設計では、2つについて気になって見ていました。1つは、他の人の言葉やかたちを借りたものではなく、その人自身から生まれたもの、その人でしか生まれ得なかったものであること。もう1つは、それらがかたちとして現れていて、新しい時代の息吹・片鱗を感じさせるものであること。そういう切実さですね。公共性とか、みんなが使えるっていう事は、みんなが使えるためにつくっていてもできない気がしている。それはある個人のあまりにも強すぎる思いがその個人を超えた時に、ある公共性を持つみたいなもののような気がしています。それは伊東さんから僕が得たことの1つですね。そういう個人から出てきたものが世界を変えるっていう事を信じている。さっき畝森さんが「ある一人のためにつくる」って言っていたけど、僕もそれはそうだと思っていて、住宅のためにつくっているんだけど、それがその住宅を越えてつながる可能性があるような物であるっていうのは、そういうところだなと思っている。例えば、妹島さんの梅林の家はその豊かさを感じてとても好きな住宅です。何かのために極限的につくったものが、そのためじゃなくて世界につながるみたいな事、個人的にすごく入り込んでいる物には、たとえ住宅をつくっていたとしても結構公共性を感じたりするんだよね。その人がどう思っているかは別として、そういうのを考えて見ていました。

 

「それぞれの卒業設計と、繋がっているもの」

 

 

  ちょっと卒業設計の話に戻して、少し自分の卒業設計について話しますね。まず自分も卒業設計を考えたきっかけから。僕は石川県の田舎の農家で育ったので、家に40畳の畳の部屋とかあって、部屋も30~40部屋くらいある。冠婚葬祭はすべて各々の家で行われる。その村の人は、生まれて死ぬまでそこで生きるわけですよ。そういう所から東京に来て六畳一間に暮らすようになった時に、しかもそれが建築計画で教わったキッチンの寸法とかでできていて、明らかに実家に帰ると実家の方が気持ちいいのに、なんか大学で教わっていることが絶対違うことのような気がしてきて、それをずっと大学の4年間ずっと思っていたから、卒業設計では「大きいものは豊かだ」ということをやりました。「オーバーサイズビルディング―大きいということのその質―」というタイトルでした。空間がどんどんどんどん大きくなった時に、計画学だけで語れない価値観が出てくる。そういうことをやりたくて、ひたすら大きくしていったんだよね。最終的には集合住宅をつくったんだけど、すごく個人的な実感と思いからからつくっていった。修士設計とかはそれをどんどん超えちゃって、結局山をつくった。大学ではそれは建築じゃないと批判されたから、それを卒業したら自分が行く設計事務所で建築としてやります、と啖呵を切ってたのを覚えています(笑)。最終的にはそれから7、8年かかって担当したぎふメディアコスモスがそうです。小嶋さんをご案内した時にその話になり、めずらしく褒めてもらったことがとても嬉しかった。メディアコスモスは100m角の大きな空間がある。小学生の時に行った図書館で走って怒られて、それがすごい記憶に残ってて、自分が設計をするんだったらそういう図書館はつくりたくないと思った。その時にいろんなことがつながって、例えばまちの外で走っててもだれも怒らない。だけど例えば会議室みたいなところで携帯鳴ったりすると怒られたり、気にするじゃないですか。そういうように何かを制限していけばいくほど音とか光とか何かが気になったりとか、そういうのも同じ原理で、どんどんどんどん大きくしてければある時気にならなくなるんじゃないかと思ったんですね。そこで超大きくした平面をつくって、そうすると子供がどこで泣いてても、勉強してる人がいても誰も怒らないという状況が生まれた。この建物の説明として、伊東事務所としては構造とか設備とか説明してるけど、僕個人としてはそういうものからあれが生まれています。そういう風に個人で考えていることが、公共性を作れる可能性があるなと思っています。今日もし言えることがあるとすれば、こういう違う個性があった時に、違う個性が今後作る全てのものにつながる可能性があるということ。卒業設計は、今だけのものではなく、この先のその人の人生において、大きなエンジンになると思う。畝森さんはどんな卒業設計をやりましたか。

畝森 僕は四谷にある台地の境界部分に集合住宅をつくりました。台地の上にはマンションが建ち並び、下には木密が
広がる敷地です。木密には細い路地があり、その路地も設計しつつ、台地の上下からアプローチできる集合住宅を提案
しました。社会的な格差がその地形に現れているのですが、路地が集合住宅まで続くものを作りました。

  そこでやったことが、今振り返ると繋がってるといったものはありますか。

―――地続きっていうことは共通してるというか。(藤井)

畝森 そうですね。なるべく排他的に考えない、等しく大事というのは共通しているかも。あと断面ですね。M1の時に西沢大良さんに卒業設計を見せたら、すぐさま断面が良くない、断面を描けと強烈に言われました。その影響もあり、断面は今もずっと意識して設計していますね。僕は岡山県の出身ですが、岡山には丸みのある綺麗なシルエットの山が並んでいます。その山には一本一本色々な木が生えていて、針葉樹から広葉樹まで美しい山は色々なものでできている。

全体的な美しさと、ひとつひとつの個性のようなものは全然分かれていなくて、植物があり、昆虫がいて、動物が住んでいて、そのひとつひとつがあるからこそ、大きく綺麗な山が存在する。部分と全体は相反せず、有機的に連続していることを僕は子どもの頃に学ぶことができたと思います。

 

 

「これから考えること」

 

―――これから建築をずっとやっていくにあたって、例えば畝森さん南さんの世代の人たちがこれは頭に残しておきな
がらやるべきだっていうこととか、僕らの世代が今のこの時代だからこそ、頭の中に置いておきながら建築について考
えるべきだっていうことはありますか。(山田)

畝森 これからより問われてくると思います。もう新しいものを作らなくていい時代ですよね。でも、建築が形をもって建つのは凄いことで、全く関係ない人もその建築を見て体験することができる。それは建築が持つ大きな価値で、与える影響は凄まじく大きい。より形にしづらくなる時代だからこそ、その形を意識するのは大事だと思います。インターネット、SNS、他にもコミュニティだったり、具体的に見えないものがたくさんある。その中で形をもつ建築をどうするのか、すごく難しい課題だけど、僕は考えていきたいですね。みんなも意識するといいと思います。

  僕はあまり年代とかの違いは感じないですね。一緒に生きてるから年齢は関係なくみんな同じ、みたいな感覚です。だから伊東事務所は、伊東さんみたいな人からオープンデスクまでみんな同じで、オープンデスクの人が模型作ってたら「そいつに模型つくらせるんじゃなくて一緒に案を考えさせた方がいいじゃないか」みたいなこと言うんですね。つまり、違う立場の人がいることが豊かだから、一緒に考えたらいいじゃないか、という感じの人の下で教わったから、みんなの世代にこうして欲しいとか、僕らの世代はこうしないといけないみたいなことは、あんまりないのが正直な所っていうのがひとつ。あとは、結構意識しているのは面白いものをつくるっていう気持ちを持ち続けること。普通のことなんだけど、このことが重要だなと思っている。卒業証書の裏にみんなで寄せ書きしてるんだけど、小嶋一浩さんに書いてって言ったら、「面白いものを!小嶋」って書いてくれて、その時はいまいちよくわからなかったけど、最近卒業証書を見返すことがあって、改めて今見ると「面白いものを」っていうのは、みんなが面白いっていうよりは、自分が面白いと思えるものなんだろうなとふと思った。そう思い続けられるか、ずっと面白いと思い続けるっていうのは、多分建築のことよりも自分が生活してたり、生きてて、いろんなものに興味を持ったりし続けられるかっていう、人間力みたいなことだと思うんだよね。それって多分建築をずっとやってることで育まれることでもあるんだけど、家族がいて、友達がいて、みたいなことで育まれることもあるじゃない。そういうことだと僕は受けとったんですね。もし僕たちの時代にしかできないものをつくれるとしたら、多分今の時代に生きてるって事が濃ければ濃いほど反映される気がするんだよね。つまり前の時代みたいな生き方じゃなくて、今の時代、だからiPhoneを持って、運動しながら音楽聴きながらみたいな。そういう現代に生きてるって事が濃ければ濃いほど、そういうものになるんじゃないかっていう気がしてます。だからしっかり生きたいっていうのと、面白いものを面白いって言い続けたいという気持ちはあります。みんなにどうして欲しいかわからないけど、その世代だからとか世代を分けて考えるのではなくて、みんな同じ時代に生きてることは変わりないから、それをよりリアルに、身体感覚として持っていることが重要な気がします。だから伊東さん見ててすごい若いなと思う(笑)。 iPadも使うし、すごいメールとかもやりとりするし、それはたぶん年齢ではなくて、時代を読む力のようなものがあるだと思うんですね。僕もそういう人間でいたい。

 

──インタビューの前半は、こちらにてご覧いただけます。ぜひご覧ください。→PDF記事:インタビュー誌面_畝森泰行+南俊允


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