こんにちは、原田です。昨年度、Y-GSAの設計助手として最後のセメスターでは妹島スタジオを担当した。スタジオ課題は「瀬戸内とともにある生活」というもので妹島さん、松沢一応さん+学生5人とともに取り組んだ。内容は瀬戸内海エリアで学生自ら敷地やプログラムを構想し、それが瀬戸内海での新しい暮らし方にどう繋がるかを提案するものだ。敷地・地域単体ではなく瀬戸内海全体のネットワークというマクロなスケールでの提案が求められる妹島スタジオらしい課題である。同時に瀬戸内海特有の素材や構法といったミクロなスケールにも意識を向けて欲しいと考えた。そこで個人でのスタジオ課題と並行して、1/1のミクロスケールな実践を大学内で行うことにした。そうした瀬戸内海のマクロとミクロを体験すべく、まずはスタジオの序盤に妹島さんが長年携わっている犬島へのフィールドトリップを行った。
<犬島くらしの植物園にて>
<犬島ステイにて>
犬島を妹島さんと松沢さんに案内いただきながら学生たちと一緒に練り歩く。自然や集落の風景は以前来た時からそれほど変わっていないはずだが、島の歴史や石の文化、妹島さんのガイドや島の人とのコミュニケーションを通して島を巡るとシャッターを切る被写体もおのずと変化していた。
<犬島の採石場跡>
<犬島の石材加工場>
瀬戸内海の、特に島における建築・土木構築物は、基礎や擁壁といった頑丈で重いものは島内で生産される石を用い、その上に木や島外から持ち込まれるプラスチックなどの軽いものを組み合わせて構成されているのが印象的であった。そうした素材の重量がもたらす瀬戸内的アセンブルの精神を1/1スケールで翻訳できないかという思いを抱きながら岐路についた。
<犬島の納屋>
<家プロジェクト_F邸>
なぜ日干しレンガで作ることになったかは明確には覚えていない。何かの拍子に妹島さんが日干しレンガのことを話題にして、それに乗っかったのが始まりだった気がする。ブログや動画サイトで日干しレンガ造りの作り方について調べるところから始めた。いくつかの情報をまとめると土を粘土化して、枠に詰めて、それが所謂日干しレンガになるためにはおよそ1か月天日で乾燥する必要があった。なので造るもののデザインはレンガの乾燥期間中に考えるとして、まずは土をこねることにした。
<日干しレンガのレシピ>
土は大学内、というかスタジオ周りの土を鍬で掘り起こして採取した。コロナの影響でスタジオの使用時間が限られていたので、日干しレンガの制作日は実質2日だけだった。レンガのレシピは土10:干しわら2:石灰0.5:水4の配合で混ぜ合わせた。スタジオの学生5人と作業をしたが、初日はたった8個しか成形できず頭を抱えたが、2日目には要領を得て一気に80個ほど作ることが出来た。
<日干しレンガの乾燥のプロセス>
日干しレンガは通常の焼きレンガよりも大きく作った方が良いらしいという情報のもと、通常の1.5倍ほどの大きさの型枠を用意した(縦9cm x 横30cm x 奥10cm)。粘土を成形した直後はチョコレートのようなこげ茶色だったが、太陽のもとで乾燥が進むにつれていわゆる土壁的な黄土色になってきた。ある程度乾いた段階で構造の佐藤淳さんに耐久性や積み方のアドバイスを頂いた。大学に戻ってレンガの乾燥を見守りながら、耐久実験をしたり、油土のスタディ模型を作りながら1か月を過ごした。
<佐藤淳さんによる日干しレンガエスキス>
(vol.2へつづく)
text_原田雄次
photo_©yujiharada