《卒制2020》インタビュー第6回は、建築家の大西麻貴さんと百田有希さんです。
百田さんには、4年前期の「10,000㎡」の課題から、大西さんには卒業設計の中間講評からご指導いただきました。
同じ釜の飯を食う
寺西 なんか事務所にこういう空間もあって、皆で食事するとか、インスタ見てても秋刀魚とかバンペイユとか季節感のあるものとか出てきたりとか、お花があったりそれもご自身で作られているんですよね。そういう生活の楽しみ方というか暮らし方みたいなものが建築をつくるときに影響している実感っていうのはありますか?
大西 ご飯作ったりとかみんなで飲んだりするのは好きなんだよね。
寺西 何か一つはさっき6万人の食卓の話の時に、食って開かれてるよねっていうのを聞いて結構そこなのかなって聞く前にちょっと納得してしまった部分はあるんですけど。
大西 あ、でもo+hでよく言われるのがみんなでご飯食べたりとか飲み会やったりとかトークイベントやったりしてたりするっていうようなイメージと、でも入ってみるとかなりハードで超アトリエ事務所でそのギャップがびっくりするってことです。でもやっぱり同じ釜の飯を食べるじゃないけれど何かこう家族的なところがあると思います。人数が増えてきたからこれからどうなっていくかは分からないんだけどどっかのプロジェクトが大変だったらそれをみんなでわーって助けるみたいな感じで、この人はこのプロジェクトでそれしかやらないみたいな感じではなくて、みんなだいたいどういうプロジェクトやってるのかがわかっていててそれが大変な時はみんなで手伝うみたいな家族的な雰囲気みたいなのがあるから、そういうのももしかしたら一緒にご飯食べたりとかそういうところから来ているのかもしれない。百田くんもやっぱり食べるの好きだよね、っていうよりあんまりずっとジャンクなもの食べたくないみたいなところあるよね、飲むのが好きだよね。
百田 建築やっておきながらあれなんだけどあんまり物に対する執着心がない。
大西 そうそう服買ったりとか、いい車買ったりとかあるじゃない。百田くんそう言うのの全くなくて常にユニクロでもいいぐらいの毎日同じ服を着続けたいみたいな感じだよね(笑)
百田 仕事になると効率を求めてしまうのもあるよね。効率って言うか、建築を考えたいってなっちゃうとそれ以外のものを最小化したいと思っちゃう。集中してやんなきゃってなるとさ、服とか選ぶ時間も嫌だってなっちゃう。
大西 そうそう。だから本当に究極にそういう状態に陥るともうウィダーインゼリーを食べて(笑)
百田 そうそうお腹減るってのが嫌なの。ちょっとずつ食べてお腹いっぱいになったらまた動けなくなって眠くなっちゃうから適度にお腹が減らないっていう状態でいるとずっと何か出来るみたいな(笑)
大西 その執着がない中でただ唯一執着があるとしたら飲むっていうことで、飲んだり食べたり。だから今のところあれだね、お酒飲むの好きな人が多いよね、私たちの事務所。元々はオーナーさんが違うビルでガレージだったところを事務所にしててサッシがなくて、真ん中を本棚で仕切ってこっち側がオフィススペースでこっち側を模型スペースみたいにしててその時は本当にキッチンがなくてカセットコンロで頑張って模型作ってる中で料理するみたいな感じで大変だったけど1年前からキッチンができたのとコロナが始まったのが一緒だったから外には食べに行けなくなって余計に作るようになったかな。
百田 建築ってね、やっぱりなんか食べたり飲んだりするとちょっと関係が変わるじゃない。仕事でもっとドライに進めるって事も出来るんだけど建築って誰とどういう風にやっていくのかが絶対どこかに現れちゃうから。
大西 そうだね、人間力総動員しないと進まないみたいなところもあるから。
百田 僕は大西さんよりもちゃんと仕事としてやるとか効率よく進めるとか段取りよくやるとかそういったことに関して結構うるさいと思うんだけど、何のためにやってるのかを考えると最後はその人自身が建築に出てくるとわけだから、そのためにやっているっていうところはある。それ以外の物理的に解決できる問題に足元すくわれたくないというか、それでやりたいこととかできないのはもう嫌だからそれをいかにやるのかみたいな。でも、それだけが目的じゃないっていうか、ご飯食べるのもそういうのに似ているような気が…
大西:私は大学、博士課程まで行ってて、博士課程が終わってY-GSAの助手になったのがちょうど2011年で、東日本大震災がその年に起こって、社会に出た瞬間に、被災地へボランティアに行くところから仕事が始まっています。そうすると、地元の人とお酒飲んだりだとか、一緒に魚食べたりとかカラオケしたりして、建築を作っていると、ご飯食べたり飲んだりっていうのは必須って感じなのね。そのあと小豆島に行ったり、そうやって建築を作ってきたのはもしかしたら今の事務所のあり方につながっているかもしれない。東北に行くまでカラオケが苦手で、でも必死で百田くんとね中目黒のカラオケ屋で、東北に備えてカラオケ練習して(笑)今はねカラオケとか全然大丈夫なんだけど。
一同:(笑)
大西:地元の人との繋がりの中で、建築を作っていくのはやはり建築をつくるやりがいにつながると思います。でもみんなで製図室でご飯食べたりとかって、今年はできなかったもんね。
寺西:できなかったよね。
大西:鍋したりとかね。してそうだよね、他の年は。
寺西:去年まではしてたんですけど。
大西:私も自分が四年生の時を思い出してみると、京都って終電ないから、あとおいしくて安い居酒屋がいっぱいあって、研究室の先輩とほんとに朝まで喋りながら飲んだりっていうのが、先生と話すよりも大切な時間だったなって思ったりして、そういう人と食べたり飲んだりって重要な気がする。
本文はこちら→6_大西麻貴×百田有希