《卒制2021》インタビュー第11回は建築史の先生である大野敏先生と守田正志先生です。
先生方には伝統的な製図技術である烏口の指導や、建築史の講義でご指導いただきました。
今回はアンケート形式でお話を伺い、ここでは一部を抜粋して掲載します。(全文はこちら→11_大野敏+守田正志)
—大野先生、全体への総評をお願いします。
今年度の卒業設計は、地域再生(活性化)をテーマとするものが極めて多かったという印象です。立地は都心から農山漁村、時間軸は近世から現代、多様な建築種別(庭・道など含めて)、規模の大小、新築と既存再生など、視点・対象・手法は様々ながらいずれもその場所性をしっかりと把握したうえで、課題をあぶりだし、自らの解決法を提示する中で地域(対象区域)の魅力増進に寄与しようとする意識の強さを感じました。また、土地の高低差を活かした垂直動線移動に注目した作品が目立ったのも印象的でした。
私の専門である建築史の研究分野でも、純粋な様式研究や文献研究よりも「保存」というジャンルに関心を持つ人が大変多くなっています。研究対象をどう社会と結び付けていくのか?建築の場合は、本質的に社会とのつながりが高いものですが、実学としての建築のあり方があらためて注目され、期待されていることを強く感じる卒業設計だったと思います。
また、新型コロナウイルスの影響を言い訳にするような未完成作品がなかった点も印象に残っています。未曽有の危機の中で、全体として質の高い内容であったことは、皆さん一人一人がしっかりと精進してくれた結果であると、頼もしく感じました。
<中略>
—守田先生、全体への総評をお願いします。
制限の多い中、例年以上の完成度の作品が多かったかと思います。まずは、皆さんの奮励に称賛を送りたいと思います。日常生活が大きく様変わりする渦中に卒業設計をすることになった皆さんだからこそ、世情を肌で感じることができ、その実感を咀嚼することでリアリティを伴った地域問題の解決提案にまで昇華できたのだと思います。
年々、巨大な建築物1棟を設計する提案が少なくなってきているのは残念に感じますが、これも時代性なのかもしれません。日本は既に生産性の拡大に伴う経済発展を無邪気に信じることのできない状況にあり、巨大建築物、あるいは大規模再開発の正当性や魅力が失われているのかもしれません。同時に、巨大建築物、あるいは大規模再開発の周辺への影響力の大きさを考えると、その実現可能性を卒業設計で細部にわたって検討することも容易ではないでしょう。とはいえ、ある意味で自由な設計をすることのできる卒業設計で、無責任なようではありますが勢いのある提案も見てみたいという気持ちもあります。そうした提案に果敢に挑戦してくれた学生がいたことも頼もしく思いました。
最後に梗概ですが、個人的には提出を課している以上、真摯に読み込み、採点の対象としています。藤原先生をはじめとするAD系の先生方のご指導の賜物だと思いますが、今まで見てきた中で一番まとまっていました。設計とは、図面や模型で自身の考えを表現することの比重が大きいのは当然ですが、やはり言葉で、文章でまとめる力も肝要です。図面や模型と文章、どちらもバランスよく表現力を磨いていってください。