《卒制2021》インタビュー、第2回は、建築家の乾久美子さんです。
乾さんには、3年後期から建築デザインスタジオでご指導いただきました。今回は、コロナの状況を鑑みてズームでのインタビューとなりました。
<中略>
−2種類のリサーチ−
勅使河原:その設計手法に何か近い部分なんで すけど、乾さんのリサーチを見ていると小さな 人が集まるような場所をしっかり見た上でリ サーチしているじゃないですか。それで作品を 観た時に必ず物として現れている感じがしない なって思うんですけど、形っていうのはどうい う扱いになっているのかなっていう。どういう 心持ちでリサーチしているのかなって。今回、 自分も同じようなことをやろうとしてうまくま とめられなかったというフシがあるので気に
なっていて、せっかくなので聞いてみようかな と思いました。
乾:リサーチは大きく2パターンに分けられる かなと思います。デザイン・ボキャブラリーを 集めるタイプのリサーチというのがまずあると 思います。それは建築のプランニングやディ テールに直接に反映させることが目的のものだ と思います。パタン・ランゲージなど、形に直 結する、設計に取り入れるタイプのものです。 それはそれであり得る方法論だと思ってます が、「小さな風景からの学び」はそうしたもの を目指しているわけではなかったです。「小さ な風景」はもう少し根源的な問題を見たいとい うか、そもそも論を確認したかったところがあ ります。そもそも論というのは、そもそも人が 集まることとは何なのか、とか、どういう場所 に集まってしまうのかというようなことで、そ ういう根源的なことを知りたかったんですよ。 あのリサーチを行おうとしたのは東日本大震災 の直後で、被災地を色々と見てまわる中で結構、 根源的な人の集まりをもう一度確認しておきた いということから始まったリサーチなので、。
−好奇心−
勅使河原 :とすると、好奇心みたいなところな んですかね。
乾 :そうですね。本当に好奇心といえるかもし れません、簡単に言ってしまえば。何があれば 人が集まってしまうのか。木が 1 本あれば集ま るのか、気持ち良い影があるとやっぱり集まっ てんなーとか、そういう事例を集めていました。
勅使河原:1 つ 1 つはシンプルだったじゃな
いですか。小さな段差とか、陽だまりとか、温 度とか。それをこう今回うまくできないかなと 思ってたので。すごくシンプルな、根源的な、
乾 :ただ「小さな風景からの学び」のような 間接的なリサーチを卒制で取り入れることは難 しいと思います。もっと直接的なリサーチと設 計との関係を作らないと、理解しにくいという か、やっぱり批判されちゃうので。卒制の場合 はやっぱりパターンランゲージ的に パターン 化できる対象を見つけてきて、設計に生かすと いうのが王道だと思います。
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