忠海ワークショップ2021サマー


先日の円錐会のイベントongoing06「横浜国大×仮設建築~軌跡からの思考~」でも発表させていただいた広島県竹原市忠海町で進行中の竹を用いたワークショップを紹介しようと思う。

 

 
<忠海ワークショップ2021サマー>

 

このワークショップは「忠海集学校」の一環として行われているものであり、「おかえり集学校」とは、パソコンなどの再生事業を行うリングロー株式会社が全国各地にある閉校を、人びとが集いつながるIT交流拠点として再生し、持続可能な地域づくりに貢献していこうというものである。今回の「忠海集学校」は7年前に廃校になった忠海東小学校を、地域の住民・材料・技術と地域内外の学生がコラボレートして、地域のための場所を再生するプロジェクトとして計画されている。

 

 


<忠海東小学校全景―神社が隣接する>

 

そもそもこの廃校リノベーションプロジェクトを地域や学生を巻き込んだワークショップ形式にしようと考えたのは、この忠海町の二窓(ふたまど)エリアで400年前から行われている伝統の火祭り「二窓の新明祭(通称:新明さん)」の影響が大きい。この新明さんのハイライトは何と言っても、火祭りの名の通り高さ20mにも及ぶタワー状のお神輿を祭りのフィナーレで燃やすところにある。

 

 


<二窓の新明祭2020―奥に見えるのは大久野島>

 

 


<祭のフィナーレの神輿を燃やす瞬間>

 

このように神輿を毎年燃やすので、毎年神輿を新しく作る必要がある。なので地域の人々は自分たちでお金を出し合い、自分たちで山へ材料を調達し、そしてその材料を加工し、自分たちの手で組み上げる。そうした「自分たちで作る」地域文化や技術をプロジェクトに組み込むことで、プロセスの段階からその地域性を活かした場所づくりができるのではと考えた。

 

<神輿設営風景>

 

 


<ロープによる神輿接合部>

 

 
<祭や地域のよろづ事を中心に活動する二窓「ざこの会」メンバー>

 

具体的には神輿で用いる材料である竹とロープによる接合方法を活用した竹の構築物を小学校に挿入していくというものである。私含め学生も竹の扱いに関しては全くの素人なので、新明さんの神輿づくりに携わっている地域の方にアドバイスをいただきながら、ワークショップ第1弾としてまずは計画の一部分を実験的に制作することとなった。

 

 


<忠海集学校外観イメージ>

 

 


<忠海集学校模型写真>

 

 


<現地スタディ模型>

 

ワークショップ第1弾は2021年9月に行われた。コロナ第5波の影響により当初よりも参加者数は制限されたが、横浜国立大学、広島大学、近畿大学(広島キャンパス)からの学生の協力の元、実施された。

 

 


<リングローさんの協力により、小学校内にテントを張りバブル方式での施工合宿>

 


<竹の搬入>

 

まずは事前に三原の山から伐採された無垢の竹を必要な寸法にカットしてゆく。竹の径は70~90mmとバラつきはあったが、ロープでの接合のおかげである程度の差異は許容される。また中は空洞なので手持ちのノコギリでも比較的スイスイとカットが進む。

 


<竹のカット>

 


<ふぞろいな竹たち>

 

カットの次はこの制作のクリティカルな作業となる竹同士の接合である。この部分は神輿の技法に乗っとって、基本的にビスや釘は用いず、ロープによって接合される。お神輿で主に用いられる結び方は男結びという手法で、この男結び自体はそれほど特殊なものではないが、それでも結び方を完全に理解するには何度も繰り返して練習する必要がある。

 

 


<結び作業―叩き子と絞め子の協働作業:横浜国立大学「栖の工房」のメンバー>

 

 


<男結びトレーニング>

 

 


<男結び>

 

1か所結ぶのにロープを叩き子と絞め子の最低2人は必要で、はじめは1か所結ぶのに2,30分を要していたが、地元二窓の新本さん、山崎さん、北嵐さんのご協力・ご指導のもと、何度も結び作業を繰り返すうちにみるみるスピードアップしていった。特に北嵐さんは神輿を作る実働部隊としてバリバリ活動されているので、スピード・精度共に圧倒される。また祭りの時に作る実物の神輿と併せて、子供たちのためにミニチュアの模型を作る文化があり、そちらのミニチュア版の再現精度もすさまじい。

 

 


<北嵐さん制作のミニチュア神輿>

 

 


<コンテクスト模型写真_S=1:30>

 

 


<北嵐昭吏さん>

 

作業手順としては中庭で格子状の面のパーツを作り、それが4枚できたところで設置場所の校舎エントランスへと運び、面同士を等間隔に接合していく。また並行して竹の土台用のコンクリートブロックを16個制作する。上下異径の円をつないだ台形型の円錐形状を作り出すため、横浜国大のCNCルーターでカットした変形型枠を事前準備した。町の伝統にささやかな現代技術を持ち込みたかったのだ。竹を含めこれら部材寸法に関する構造的アドバイスは佐藤淳さんにお願いした。

 

 


<中庭ピロティ部分での作業風景>

 


<土台用コンクリートブロック打設風景>

 


<コンクリートブロックたち>

 


<竹とコンクリートの接合確認>

 

面のパーツが組みあがったところで設置場所へと運び、組み上げていく。作業中に何人かの地域の方が物珍しそうに声をかけてくださったが、「新明さんのお神輿の作り方を参考にしているのです。」と答えると、皆どこか誇らしげな表情を浮かべていた。

 

 


<組み立てプロセス>

 

 


<組み立てプロセス>

 

 

<地域の方からの差し入れ>

 

<組み立てプロセス>

 

作業終盤に台風14号直撃の災難にも見舞われたが、幸い一晩の間に駆け抜けていったので、何とか所定の期間内に完成させることができた。はじめての地域ではじめてのワークショップによる協働作業であったが、地域(町内)の方々、地元(県内)の学生、そして外から(県外)やってくる若者のそれぞれの知見や労働力がうまく補完し合い、ひとつのものづくりに没頭する美しい制作の光景を垣間見ることができた。

 

 

 

 

 

今回は実験的に校舎から外に飛び出している部分を、ワークショップ第1弾「竹のゲート」として制作したが、2022年3月にワークショップ第2弾として校舎内部及び中庭部分の制作を予定している。次回も「自分たちで作る」ことの意義を問いながら、作ることの喜びを一丸となってかみしめたい。

 

 


<忠海集学校「竹のゲート」>

 

 


<忠海集学校「竹のゲート」>

 

 


<忠海集学校「竹のゲート」上部>

 

 

 <忠海集学校「竹のゲート」下部>

 

 

  <忠海集学校「竹のゲート」接合部>

 

 

  <忠海集学校「竹のゲート」夜景>

 

―忠海ワークショップ2021サマー制作協力
リングロー株式会社
忠海町二窓地区「ざこの会」から:新本直登、山崎進、北嵐昭吏、福浜数幸、沖胡勤
横浜国立大学「栖の工房」から:長岡凌太、河野奏太、平田雄基
広島建築系学生団体 「scale」から:城本大輝、田中透弥(広島大学)、田中蒼衣、坂野弘江(近畿大学)
※敬称略

 

 

 

 

 

最後に上述の次回開催の忠海ワークショップ2022スプリングの参加者を募集します。期間は2022年3月7日~19日に開催予定です。全日参加だけでなく、スポットでの参加もOKです。大学・学部・年齢は問いません。例えば下記のようなことに興味がある人は何かしらの学びが得られると思います。
実際に体を動かしてモノを作るのが好きな人/瀬戸内海が好きな人/まちづくりに興味がある人/旅が好きな人/リノベーションに興味がある人/他大学の建築学生との交流に興味がある人/地域の人や文化との交流に興味がある人
詳しくは下記ポスター、あるいは原田宛(tadanoumi.workshop.2022spring@gmail.com)までご連絡ください。

写真:yujiharada
文:原田雄次

 

 


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