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韓国ドラマとアイデアコンペ

 



前回は前々回からあまりに時間が空いてしまったため、ですます調だったかどうかさえ忘れていました。言文一致体。本文からはですます調で参ります。

ところで、写真は韓国ドラマの宣伝用ポスターです。どうして台湾からのレポートに韓国ドラマ?と不思議におもわれる方がいらっしゃるかもしれませんが、ところがどうして今、台湾では空前絶後の韓流ブームなのです。より正確にいうならば、この兆候は数年前から伏流水の如く存在していました。街中にはK-POPが溢れかえり、忘年会は江南スタイル。それがここに来て一気に爆発した感があり、きっかけとなったのがこのドラマ「來自星星的你(中文題)」、邦題「星から来たあなた」なのです。そして、こともあろうか私佐野健太(39)、うっかりすっかり見事にこのドラマにハマってしまいました。

ストーリーは400年生きた宇宙人と現在に生きる売れっ子女優とのラブロマンス。と、そこだけきくとなにやら胡散臭い感じがするのですが、なかなかどうしてこれがまあ良くできている!まったくもって論理的な破綻がないのです。

このまま韓国ドラマ・韓国映画、しいては監督・俳優陣がいかにすばらしいかをとくとくと語り続けるのもやぶさかではないのですが、無理矢理建築に引き寄せようとすると、韓国ドラマにはアイデアコンペに勝利するヒントが隠されているようなきがしてならないのです。

いきなり大風呂敷を広げてしまった感は否めませんが、つまりはこういうことです。フィクションとノンフィクションの境界に対してどれだけ作者が自覚的になれるか、この点こそがアイデアコンペにとっては非常に重要であり、それを示唆してくれる存在が韓国ドラマなのではないか、というわけなのです。

アイデアコンペはもちろんフィクションです。フィクションなのでなんでもアリです。架空の敷地に建っていてもよいし、あり得ないくらいお金がかかっていてもO.K.。極端な話、重力すら無視したってかまわない。そういう現実的な条件を軽減させることによって斬新なアイデアや圧倒的に美しいイメージを提示させること。それこそがアイデアコンペ本来の目的なのですから。

ところが、このしばりをどこまでもゆるくしてしまうと、成功率はぐっと下がってしまう。審査員のほとんどは第一線の建築家。常日頃現実の厳しい世界と戦っている人たちです。彼らに「面白い!」と膝を叩かせるためには「あり得ない、あり得ないのだけれど使えるかも」という建築、あるいは都市の持つ可能性の一面をチラみせする必要があるのです。

また、作者がリアリティーをどのレヴェルに設定するのかをしっかり認識してさえいれば、おのずと表現もそれに見合ったものとなってくるはずです。描きすぎてもいけないし、また描かなすぎてもいけない。記憶に新しいところでは例の『美味しんぼ』事件が良い反面教師になり得るのではないでしょうか。『美味しんぼ』の描写は本来よりかなり写実的で、実際のお店はポンポン出てくるし、人物も実名でガンガン登場する。限りなくノンフィクションに近いフィクションであるにもかかわらず、そこに根拠の抜け落ちたフィクションをさらりと挿入してしまったところに作者の無用心があった。部分詳細まで大きな縮尺できっちり描かれているのに構造的にあり得なくて興ざめ、みたいな。


話は韓国ドラマに戻りますが、400
歳の宇宙人は人間の7倍の聴力を持ち、瞬間移動もできちゃいます。もうハチャメチャではありますが、その設定の飛躍以外はいたってロジカル。ある仮定のもとにおいてはすべてが納得がいくというものであり、そこには古今東西共通する男女の機敏があり、人生のはかなさが詠われているのです。

夏といえば学生のみなさんにとってはコンペの季節。頭をフル回転させて脳が疲れたら韓ドラも観ながらリフレッシュしつつ思考を整理されてみてはいかがでしょうか。


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