ちょうど1年ぶりの更新になってしまいました。
皆様、暑中お見舞い申し上げます。
今年のエストニアの夏は暑いです。連日30度ほどになり、先日一時帰国していた日本とあまり変わらない夏になってます。
2回にわけて、6月27日から7月20日に隣国ラトビアの首都リガで開催されていたPaper
Object Festivalへの参加したしたいきさつから完成までを書きたいと思います。
このフェスティバルは今年1年間、リガで開催されている欧州文化首都・2014の一環として企画されました。去年の8月にフェスティバルのキュレーターが連絡をくれて、参加を促されました。2011年にタリンでの欧州文化首都の際につくった私のィンスタレーションを見て気に入ってくれたといわれ(UNICORNのブログから)、その他日本からアーティストを招くことを考えているとのことでした。
さっそく、高速バスで4時間かけて現地に。キュレーターはリガの旧市街と空港の間に位置する、19世紀後半からの木造住宅の並ぶ地区の真ん中でカルンシエマ・クオーター(Kalnciema
Quarter)というものを主催している人でした。
毎週土曜日はマーケットが開かれ、無料のコンサートやイベントがいろいろ開催される場所です。おしゃれなカフェやお店などもはいっています。
キュレーターの話によると、日本人アーティストによる紙を使ったインスタレーションを街のなかに作り、いろいろなインタラクションをつくりだしたいとのことでした。インスタレーションの設置場所は自由に選んでくれといわれ、さっそくクオーター周辺の散歩に。
まだまだ手入れのなされていない木造住宅が並び、大きな木の茂るのどかな雰囲気は同じ時代に形成されたタリンの木造住宅地と似ています。それでいて、一階部分の作り方や、木造の模様などに細かな違いがいくつか見当たります。
散策の途中で公園をみつけ、その後ろの丘の上にちょっと雰囲気の違う建物を見つけました。
これはソ連時代によくつかわれたシリカ・ブリックがつかわれており、落書きがあちこちに。
ちょっとみてみると、なんと図書館でした。
平屋建ての小さい建物で、児童図書と大人の図書の部屋に分かれています。
なんとなく気になる建物でしたが、帰りのバスの時間のために図書館をでて歩いてバスターミナルに向かいました。
紙は模型やスケッチなどなど毎日手にするものですが、紙を材料として設計したことはなく、事務所のみんなともどうしたものかと頭を悩ませました。もちろん紙を使った外部空間でのインスタレーションには雨風やいたずらの心配があるのですが、こわれたらそれはしかたがないとキュレーターと同意し、とりあえず何が考えられるかとフリーハンドで、ゆっくりと準備を始めました。半年くらいかけて10案ほど場所やコンセプトについて提案したのですが、結局このちょっと寂しそうな図書館を場所に選定することになりました。紙を使って図書館を「リノベーション」することになったわけです。
この地域は失業者や貧しい人たちも多く住んでおり、犯罪もあると聞きました。しかし、一日の利用者は100人ほどいて、地域の唯一の図書館として使われています。住民からは要望があるにもかかわらず、リガ市が補修のための予算を割かないためにいまの状況になっています。
建築家としては、ただきれいなオブジェをつくるだけではなく、場所性や社会性を加味したインスタレーションをするべきだと考えていたので、納得のいく選択になりました。
イニシャル・スケッチ
インスタレーションの最終案は、雨風をある程度耐えられる素材としてダンボール紙を用い、それを折り曲げたものをモジュールとして、ゆるやかに外壁を覆うものとなりました。
当初は「のりしろ」の部分で両面テープを使って貼り付けることを計画していたのですが、外壁が平ではないことから、現地の設営スタッフの意見をいれ木の下地を使うことにしました。
ビフォア(リガ市に提出したフォトモンタージュより)
アフター
この図書館の名前は、Zvirbulis
といい、ラトビア語で「すずめ」を意味します。紙を使った印刷物である本を所蔵する図書館を、折り曲げた白い紙のモジュールで包み、地域の図書館の重要性を再提示するとともに、忘れられて飛べなくなった「すずめ」がもう一度飛べるように手助けしたいと考えました。
次回は設営から完成まで、そして他の参加アーティストの作品にも触れたいと思います。