<Y-GSAの土壁>
1か月の乾燥期間を経て日干しレンガ88個は完成した。「日干しレンガ」とはよく言ったもので、はじめ日影で干していたがなかなか硬化しなかったが、日向に移動させてから一気に黄土色に変色し始めた。
構造の佐藤淳さんにアドバイスいただいたレンガの耐久実験を行った。ノルマの荷重条件をクリアし、理論的には机でも椅子にでも使える材料強度は確保した。油粘土模型でレンガを組み換えながらスタディをし、最終的にY-GSAのアプローチのカーブしたした植え込みにエントランスサイン兼カウンターとなるようなデザインに決定した。
<スタディ_01>
<スタディ_02>
<スタディ_03 (最終案)>
レンガは積み始めると速いもので、学生たちの協力の元、1日で制作したレンガ88個すべてを積み上げた。
日干しレンガ同士のつなぎは日干しレンガと同じ成分の粘土を用いたので、横国キャンパスの大地が壁として立ち上がった。
積み上げた状態で一定期間乾燥させたのちに、土壁の上に載るサインボックスや天板の制作を進めた。その土地で採れる「重い」日干しレンガの土壁 + 外からやってくる「軽い」プラスチックのサインボックスは、前回の犬島リサーチで持ち帰った瀬戸内的な工法のエッセンスのひとつだ。
<Y-GSAの土壁>
特に機能的な使われ方はイメージしていなかったが、Y-GSAでの講評会の時の学生のちょっとした溜まり場になっていたり、昼食時のテーブルとして使われる光景も目の当たりにした。屋内で集うことが難しい昨今において、こうしたささやかな構築物が屋外の居場所づくりに貢献できれば幸いである。
完成時には植え込みの雑草もまばらであったが、春、夏と季節を追うごとに土壁はすっかりと草に覆われてしまった。また嵐や地震にも何度か見舞われたが、今のところ無事に立っている。学生の創造と挫折の瞬間を見守りながら、土壁はやがてまた大地に還っていくのだろうか。
最後にY-GSAの土壁のメイキングムービーをご覧ください。
企画・設計:Y-GSA 妹島スタジオ(妹島和世・松沢一応)+原田雄次建築工藝
制作:Y-GSA 妹島スタジオ 2020AW(松永理沙・草原直樹・栗田 幸乃助・瀬川 未来・松浦 光紗)
text_原田雄次
photo_©yujiharada