昨年より友人のクラウディオ・トーレス、クララ・レウッター、エミル・ストラウブと進めていたYAPパビリオンが完成した。
YAPパビリオンについては以前記したが(link)、簡潔に言えばテンセグリティ構造を応用した移築可能なドーム型パビリオンである。敷地はサンチアゴ新市街に位置する都市公園の一画で、我々はテンセグリティの特性を活かし、少ない材料で大きなの気積をもった空気のかたまりのような公園のサロンを提案した。B.フラーの言葉を借りれば” Doing More with Less = 最小で最大を成せ” である。
全体としてはアルミパイプとスチールケーブルとターンバックルによる楕円形のストラクチャーにサーモン養殖用の長方形のナイロンメッシュが覆いかぶさっている。平面は36m x 16mで高さは6mになる。
テンセグリティ構造特有の軽やかさを失わずに躯体をスマートに成立させるべく構造設計を佐藤淳さんにお願いした。大きな模型や3Dモデルでスタディしたフォルムに佐藤さんのテクニカルなフィードバックを組み込んで設計は進められた。最終的にケプラーの法則第二によって楕円を面積で24分割されたプランが採用され、そこに然るべき寸法を持ったアルミパイプとケーブルとターンバックルが当てがわれた。佐藤さんには最終的にチリまでお越しいただいて構造チェックや施工上のアドバイスをいただいた。その時の旅の様子はGA特集号-建築への旅・建築からの旅、構造的な解説はGA JAPAN 147で詳しく取り上げられている。
我々が特に注力したのはパイプ端部パーツの仕様である。ケーブル端部を内部に収め、かつ引張に対して十分な耐力を備えるために無垢のジュラルミンパイプを削り出して作られた。ケーブルが通る穴は箇所によって異なり、合計108種216個がサンチアゴの町工場で作成された。
必要なパーツはチリ・カトリック大学の工房でプレファブリケーション化され、その後敷地に運び込まれ、24名の学生インターンと1名のマエストロの協力の元約1か月を費やして竣工させた。
インテリアはバルパライソのボタニカルガーデンから拝借してきた巨木の切りっ放しを家具的に配置した。テンセグリティの躯体の儚さに対して、木塊の物質的・時間的な重量感が対比的なエレメントとなっている。また頭上のケーブルに水のミストを発生させるチューブを楕円状に沿わせて夏の暑さを和らげると共に、夜は線状の照明と相まって幻想的な雰囲気を演出する。
こうして無事オープニングを迎えることができ、当日は多くの人で賑わった。そこではストラクチャだけの純潔的な美しさとはまた違った、多くの人々が集うことを許容できるパビリオンの懐の深さみたいなものを感じた。他にも会期中には音楽イベントやレクチャーなどが定期的に催された。訪れる人々はこのパビリオンが一体全体どういうからくりで成立しているのか知る由もないけれど、ただ垂直に浮遊するアルミの棒の元で巨木によじ登ったり、水のミストと戯れたり、それから愛を語らったりした。こうして我々のテンセグリティを用いた大きな空気のかたまりは地球の裏側チリ、サンチアゴで無事達成することができた。
最後に建設プロセスも含めたビデオでその空気を感じていただきたい。
YAP PAVILION 7
Architect: Claudio Torres / Clarita Reutter / Yuji Harada / Emile Straub
Structural engineer: Jun Sato Laboratory, University of Tokyo / Jun Sato Structural Engineers Co., Ltd.
Jun Sato, Shohei Furuichi, Midori Tsuzuki
Fabrication: Julio Brito – Enercom S.A.
Ilumination: Mauricio Lacrampette – Marcela Uribe
Video making: Nicolás Morales – Esteban Arteaga- Daniel Rodríguez
Construction Team: Héctor Rivera, Viola Guarano, Mauricio Yañez, Maira Vega, Miguel Uribe, Fabián Acuña, Simón Herrera, Nicolás Schmidt, Constanza Dalleto, Malvina Ruelas, Francisco Beltran, Francisca Vargas, Josias Aliaga, Pablo Peñaloza, Matías Guajardo, Andrea Yataco, Julia Bustamante, Natasha Urretaviscaya, Pablo Castro, Catalina Berrios, Rodrigo Vega, Carlos Parra, Galit Hojman, Martin Rojas y Nicolas Navarrete.
Project Year: 2016
Construction Time: February-March 2017(15days prefabrication – 15days montage.)
Construction Site: Araucano Park, Las Condes, Santiago, Chile.
Structural Material: Alminium Tube Ø2”+3”, Steel Tube Ø3” Turnbuckle, Steel Cable, Steel Baseplate, Steel Stake
Exterior Material: Salmon Mesh 42×23 mt.
Syistems: Water Mist system, 90 spray nozzles. 1 Strip of LED tube L:50m and 24 spotlights recessed to the ground.
Site Surface: 978 m2.
Construction Surface: 300 m2 ellipse interior , 565m2 rectangle exteriores.
Construction Volume: 1.690 m3
Total Weight: 1300 kg.
Client: Constructo
Finance: Constructo, CAP S.A. y Enercom S.A.
©Torres+Harada+Reutter+Straub