《卒制2021》インタビュー第七回は髙橋一平さんです。
髙橋さんには2年生のデザインスタジオからご指導いただきました。卒業設計のことや髙橋さんの学生時代のことなど、幅広くzoomにてお話をお伺いしました。
以下本文から抜粋して掲載します。(全文はこちら→7_髙橋一平)
答 え の な い 問 い へ の 好 奇 心
髙橋 動物に最近興味があってね、今、仕事で動物のプロジェクトをやっていて、動物の歴史をずっと本で読んでいる。ヨーロッパ独特の価値観、それからアジア独特の価値観は動物に対しても分かれていて。ヨーロッパ人は、動物が機械だって言い切っていた。なかにはそんなことはない、動物にだって魂があるし、一緒にいれば感情もきっとあるって言う人もいるんだけど、基本、動物機械論っていうのがありまして、動物はマシーンだと。昆虫は精密機械だと捉えていた時代なんかもあって、そういうところにもあらわれてくる。でも結局、人間の根源というのは、追求しても答えは見つからないんですけど。ただ、そういう見つからないことに対して諦めるのではなくて、好奇心を持ち続けていくことは重要だと思う。実際、キリスト教は終わるかといったら終わらないんだよね。神なんていないかもねって、みんなどっかで思っているけど、自分が不幸に立ち向かうときには、教会とか神社に行っている可能性がある。これは一人の力、自分自身の力で緩和させたり、解決させたりしようと人間は多分思っていない。例えば、誰か身近な人が死んじゃったときに、一人では乗り越えられないかもしれないし、災害があって多くの人が死んだときに、自分の知識とA Iは信用できなくなるのでは。そこはやっぱりあると思うんです。人間の感性は何かしら宇宙全体に行き渡っているからだと思うんですよね。感性、想像の対象はやっぱり重要なことですよ。そういったものと建築が関われるのかどうかってことをやっぱり追求した方がいいと思う。なので、そういうことを言っている。
坂田 先ほど人間のために作っていたっていうのがフィードバックのために作っていったっていうように流れが変わっていって、それ自体が空間の歴史っていう話だった。
髙橋 ちょっと大雑把ですけどね。乱暴なまとめ方ですけど。
坂田 じゃあ人間のために作っていたというのは、神がいるかいないか分からないから、とりあえず、教会を建てるということですか。
髙橋 そうかもしれない。とにかくやり場のないこの気持ちをどうしようかってことでやり方がいろいろ違う。横浜国大のすごい上のもう亡くなった先生で井上充夫さんっていう建築史家がいまして、その人の本すごい面白いよ。そのやり場のない感情をね、韓国では、中国では、中東では、みんな異質なんだって。塔や塚を使ったり、みんなやってることは同じなんだけど、出てくる様式が全部国ごとに違う。これはめちゃくちゃ面白い。
寺西 『建築美論の歩み』って本ですか?
髙橋 そうそう、『建築美論の歩み』、それから『建築美の世界』。
坂田 それって塚とか洞窟とか建築の原型をどんどん並べていくような。
髙橋 あとは、安心したところで動物から襲われないように砂漠で寝たいとか、そういうことで昔の集落ができてきたりさ。
坂田 それがフィードバックのために作った空間?
髙橋 それがさ、どんどん進化していくじゃない。そこで技術っていうものが出てくるんだけど、そこでまた人間が増えて大多数っていう問題が生まれる。そうすると、どこかの段階で強い者と弱い者、富裕層と貧民層っていうのがどうしたってできる。権力を持っている人とそうでない一般市民っていうのが。そうなると、産業革命が起きちゃって、奴隷解放とか、要するに働かされていた弱者たちが出てくる。そういうふうになると、平等化が起きてきて、これは近代の歴史とも重なるんだけど、人間が等しく何かの恩恵を受けるためにはどうしたらいいか、そこで商売が発達してきて、物々交換が発達してきて、いろんな人が食うためにお金が必要だったり、ものが必要だったり、食べ物が必要だったりするんですけど、そこをみんながみんな確保することで、よりよくしようと思ってくるんだよね。その技術っていうものを。例えば、火をつけるのに1時間かかってたらかなわんなと、なんとかならないものかって言って、ガス使ってみたり…。それが結果的に、フィードバックに行き着く。この過程は想像しやすいでしょ?
坂田 より簡単に、より手軽に…。
髙橋 要するに、失敗から学ぶっていうこと、平たく言えば。経験から学んで、経験を生かしてやるっていうこと。これってさっき言った、忘れるっていう話と近くて。それをやめた方がいいんじゃないか。文明はこれ以上進んでも仕方ないなと思っていて。でも、もっと進んだら何が起こるのかっていうのは興味あるんですけどね…。国際キリスト教大学を出た坂田くんなんかはどう思うか(笑) キリスト教っていうのはなくならないでしょ。
坂田 そうですね。
髙橋 神を信じ続けるよね。僕は神を信じるタイプではないですけど、何かは信じるよね、きっと。何を信じるのかね。自分だけではないと思うんですよね。